【翻訳】ポケモンクリエイタープロフィール:有田満弘さん
【翻訳】ポケモンクリエイタープロフィール:有田満弘さん
【翻訳】ポケモンクリエイタープロフィール:有田満弘さん
 今回はUS公式から。
 使い勝手が悪くて見づらいと評判(?)のUS公式ですが、その中にひっそりと、有田さんのインタビューがアップされていました。

 先日のGamespotのインタビュー(http://ukinins.diarynote.jp/201806091300351790/)と同じタイミングで実施されたものだと思いますが、
 こちらは有田さんにフィーチャーし、話の内容も非常に多岐にわたります。
 前回のインタビュー同様、始めたばかりのかたからポケカ歴の長いかたまで、多くのかたに読んでいただきたい内容です。

 いつもどおり、訳語の至らなさや誤訳の責任は、すべて僕うきにんに属します。
 読みやすさを考慮して、訳文の省略や改行の変更を行った箇所があります。
(今回も例によって無許可翻訳なので、何かあればすぐに削除します)

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https://www.pokemon.com/us/pokemon-news/pokemon-creator-profile-mitsuhiro-arita/
July 6th, 2018


たとえ有田満弘という名前を知らなくても、その作品を見たことはきっとあるはずです。
1996年に最初のカードが日本で登場して以来、20年以上にわたって、有田さんはポケモンカードのイラストを手掛けてきました。その数は500枚以上に及びますが、その中には、ポケモンカードの歴史に残るカードも多く含まれています。
ポケモンカードにとって、むしろポケモンの世界全体にとって、有田さんが創り上げてきたものの影響は計り知れません。

つい先日、私たちは、有田さんとテーブルを囲んでお話をする機会に恵まれました。普段は自宅のスタジオで仕事をする有田さんですが、今回は有田さんのご好意で、ポケモンカードの開発を担当しているクリーチャーズ社のオフィスでお会いできました。

有田さんは、カードイラストを担当する他のアーティストたちと同様、クリーチャーズ社の社員というわけではありません。クリーチャーズ社は、有田さんが他の仕事やプロジェクトに関わることを許容しています。
アーティストとしての有田さんのキャリアの中で、ポケモンは主要な位置を占めています。しかしながら有田さんは、この仕事を始めたころは、まさかこうなるとは思ってもみなかった、と言います。
ポケモンは、最初に発売されてから世間にしっかりと認知されるまで、およそ1年の期間が必要でした。そのため有田さんにとっては、ポケモンが今のような世界的な現象になるなどとは、考えもつかなかったのです。

「一番最初にポケモンカードに携わった頃は、まさか自分が20年後もポケモンカードの仕事をしているとは予想もしていませんでしたね」と有田さん。
もしそうなると知っていたら、作業費用をもう少し高く請求していた?という質問には、「もちろん」と冗談まじりに答えてくれました。

このインタビューに際し、有田さんは、ポケモンに携わってきた歴史の素敵な証明書を持参してきてくれました。それは、有田さんが手掛けてきたカードすべてを収めた、分厚いカードバインダーです。

有田さんは言います。「こうやってめくっていくと、本当に色々な思い出が蘇ってきます。全部が全部、本当に大好きなカードなんですよ」
バインダーには、537枚のカードが、リリース順に並べられていました。このバインダーを見ることは、ポケモンカードの歴史を見ることと同義なのです。

有田さんの影響力が最も垣間見えるのは、バインダーの一番最初のページ、第一弾のリザードンとピカチュウでしょう。

「自分には、この2枚ほどに愛されるカードはもう描けないのではないか、と思うことがよくあります」と有田さん。「それでも、最近のミュウツーのカードには、好意的な反響をたくさんいただきました。もしかすると、あの2枚を超えるカードを、いつの日か描けるかもしれませんね」
また、有田さんは、たとえ知名度の高いポケモンを描く依頼を受けても、特段プレッシャーを感じたりはしないそうです。

有田さんがポケモンカードの仕事を始めてから20年。その間に、多くの変化がありました。昔はどうだったのか、ポケモンカードが世に出る前も含めて、有田さんは語ってくれました。

「ご存じの通り、初代ポケモンはゲームボーイのソフトとして世に出ました。色はモノクロで、すごく原始的なドット絵だったんです。ポケモン仕事を始めたころ、せいぜい参考にできそうなものといったら、このドット絵の、小さなポケモンたちぐらいだったんですよ」
それら素朴なグラフィックから、有田さんは、独自のスタイルでイラストを産み出していきました。それらの中には、後年、ポケモンが絵として表現されるときの姿に影響を与えたカードイラストが複数存在しているのです。

有田さんは、イラストがポケモンファンにちゃんと受け入れてもらえるようにと、きちんと時間を取ってゲームやアニメに触れるようにしています。
とはいえ、スケジュールが多忙なために、ゲームをすべてクリアできるわけではない、とも言います。そして皮肉なことに、ポケモンカードは、思うように遊べていないとのことです。

「いま住んでいるところのまわりには友達がぜんぜんいないので、遊ぶ機会がそんなにないんですよ」と有田さん。
「昔、クリーチャーズがまだ小さな会社で、ポケモンカードをただ作っていただけだったころは、打合せのあとピザの出前を頼んでよくカードをやっていたものでした」

ポケモンカードの見た目や雰囲気をつねに新鮮に保つため、有田さんは、ポケモンのイラストを常に研究し、練習するようにしています。
自身の強みは、他のアーティストの仕事を必要以上に見たりせず、自分のスタイルに集中することだ、ということを、有田さんは重々認識しています。

「ポケモンカードが一貫してこれほどの数のアーティストを抱えている理由は、絵のスタイルのバリエーションを多く持つため、そして、アーティストそれぞれの個性を活用するためです」と有田さんは言います。

有田さんがポケモンカードイラストを制作する過程もまた、何年にもわたって一貫しています。
まずは絵の場面設定のため、手描きのラフスケッチを何枚か描き、クリーチャーズ社側に選ばせます。おおよその方向性が決まれば、白と黒の線画を描き、それから、最終形に近い色つきのバージョンを描いていくのです。

「これら3つのステップそれぞれに、チェックと承認が必要で、それなりの時間がかかります」
合計すると、プランニング、イラスト制作、そして承認とで、絵が1枚できるまでに7週間ほどもかかるそうです。

ポケモンブランドを深く理解している有田さんには、自身にとってしっくりくるようにポケモンを描けるよう、かなりの裁量が与えられています。それでも最初の段階では、絵の設定やトーン決定にはクリーチャーズ社が関わります。
イラストの仕事は、特定のカードへのイラスト依頼という形でスタートしますが、同時に、場所やシーン等、クリーチャーズ社がどんなイラストを期待しているかに関する情報も与えられます。

「たとえばクリーチャーズがアローラ地方にスポットを当てたいとしたら、アローラ地方についての情報が与えられます。また、描いてほしい特定のポーズや攻撃姿勢などがあったりもします」と有田さんは説明してくれました。

有田さんは、イラストそれぞれが個性を持てるように気を配っています。
「イラストを描く上でいつも心がけているのは、いったいそのポケモンが何ポケモンかを考えること。そして、自分がこれまで他のポケモンの絵をどう描いてきたかを考えないようにすることです」
しかしこれは、一部のポケモンにとっては非常に難題になりえます。分厚いバインダーからタマゲタケのカードを取り出しながら、有田さんは、時にはけっこう大変なときもあります、と語ってくれました。

「このたぐいのポケモンは、ポーズを取らせづらいんです。ここでは、自分の想像で、木にもたれさせることにしました。そうすることで、本来のタマゲタケの柔らかさが伝わると思ったんです」
ポケモンカードの仕事で有田さんが強く望むのは、ポケモンの、リアルな見た目を描くことです。
「私はいつも、現実世界と自然を観察するようにしています。ポケモンを描くときには、それを反映させて、あたかも実在の生物であるかのように描こうとしています」
この点において重要な要素として、背景もまた、できる限り現実世界を反映させているそうです。

しかしまた、有田さんは、年月を経るにつれてポケモンがどのように変化してきたのかも認識しています。有田さんが描いた第一弾のピカチュウのイラストを見ると、この有名なポケモンは、昔は少しぽってりしていたのか、と思わず言ってしまうかもしれません。

「ピカチュウの体のプロポーションは、おそらくはアニメの影響で、少し変化してきました。もともとのプロポーションでは、動き回ったりしている姿を見せるのはちょっと難しいでしょう」と有田さん。
「それでも、もしも私がいまピカチュウを描くとしたら、そして、もしもそれが動きのある場面でなかったとしたら、私は昔のデザインにこだわるでしょうね。この、首の部分のあまり見えないスタイルに。でも動きを前提とした場面では、もっと現代風の姿で描くと思いますよ」

トレーディングカードは視覚メディアの一種でもある、そのように理解を深めるにつれ、有田さんのスタイルも変わっていきました。
ポケモンカードだけでなく、昔のトレーディングカードでは、イラストは、あまり細かく描き込まれてはいなかった。そう有田さんは言います。

「これは他のカードゲームにも言えることです。昔のマジック・ザ・ギャザリングのカードでもそうですね。確かに昔のイラストだって決してシンプルではありません。けれど、絵の中でそんなに多くのことが起きているわけではないですよね」と有田さん。
「現代のイラストは、実際、とてもきれいです。ただそれは、単に細かく描き込まれているだけ、とも言えます。昔のスタイルが好きなファンのかたはいまだ多くいると思いますよ」
こういった変化は、技術の進歩のおかげでもあります。最近のパソコンでは、以前よりもさらに細密な描写が可能になりました。それでも、イラストがカードの大きさに合わせて縮小されてしまうと、もともと持っていたインパクトもいくぶんか失われてしまいます。

「ときには昔のシンプルなデザインに立ち返って、インパクトの重要性を認識するようにしています」そう有田さんは言います。

その一方で、フルアート版カードでは、有田さんをはじめとしたイラストレーターたちは、以前よりも細部を描けるようになりました。最近手掛けたウルトラレアのカードを広げながら、有田さんは、そういったフルアート版は特別な見方をしているんです、と説明してくれました。

「イラストレーターとして、私たちは皆、フルアート版のイラストが、実際のサイズよりも大きく感じられるように描こうとしているんです。何がイラストの枠の外に出ることになるのか、時間をかけて考えます。そしてレアのカードなら、どの部分が光るのかも考えます」
有田さんはこう付け加えました。こういった説明は、シンプルなカードのほうがインパクトがあると言ったさっきの話と食い違って聞こえるかもしれない、でも、大きくて複雑なイラストのほうが、新しいことにチャレンジできる余地が多くあるんです、と。

ポケモンの側が変化するにつれ、有田さんの手法も変化していきました。パソコンの進歩のおかげで、作業のプロセスは迅速化し、大きなプロジェクトにも関われるようになりました。
有田さんはイラストに彩色するためにパソコンを使ってきましたが、カードよりも大きなサイズのイラストでは、それもかつては難しかったと言います。

「昔はパソコンの能力も貧弱でしたから、大きなポスターサイズの仕事のときは、絵をいくつかに分割して、他の部分のことを考慮に入れながら部分部分をパソコンで彩色していく、ということをやっていました。当時はパソコンを使うのもずいぶん面倒だったんです。それが今では、技術も進歩して、作業もずっと楽になりました」

アニメや漫画のおかげで、ポケモンの見た目、ビジュアル面は非常に扱いやすくなりました。有田さんによれば、立体イメージよりも、平面イメージを手掛けるときのほうが、仕事は遥かにやりやすいそうです。
「立体になった途端に、プロポーションやら何やら、全部気にしないといけなくなって、色々と難しいところが出てきます。たとえば平面なら、毛が逆立っているのを描くのは簡単ですが、それが立体だと、相当に難しいんですよ」

ご自身の仕事について、有田さんはこう述べてくれました。
「仕事は常にベストを尽くす。その上で、絵の良しあしの評価は、未来に委ねようと思っています」
500枚と20年を越すクリエイティブな仕事を経て、有田さんは、自身がポケモンの世界に果たしてきたことに非常に満足できていると言います。これからもきっと、ポケモンカードの中で、有田さんの創造的なアートにたくさん出会えることでしょう。

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 以上になります。お読みいただきありがとうございました。
 個人的には、昔はピザの出前を頼んで~のくだりが非常に好きなのですがwタマゲタケの話などは、イラストを見ながら、なるほど、と思いました。
 MtG公式では、よく開発側の裏話も記事になっていますし、こういった、ポケカのサイドストーリー的な内容を扱った記事も、もっともっと増えてくれたらいいな、と思います。

コメント

バンギ丁
2018年8月11日16:48

はじめまして、浜松でポケカしている者です。
翻訳ご苦労様です!
自分的には有田さんと姫野かげまるさんはポケカイラストレーターのレジェンドだと思っているので、とても面白く興味深く読ませていただきました!
初期から現在まで活動されているので、有田さんの影響力は凄まじいですね。

うきにん
2018年8月13日23:17

>>バンギ算さん
はじめまして。お読みいただきありがとうございます。
そのお二方は本当にポケカイラストのレジェンドですよね。イラストレーターさんを扱った記事も、今後ももっと出てきてくれたらと思います。

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