【コラム】「キャッチャー以前」の環境に学ぶ(場を並べるコンボデッキ編)
2013年10月18日コメント (5)■はじめに
翻訳をやるとアクセスがすごいことになるのですが、今回は残念ながら翻訳ではありません。
11月からの新環境は、キャッチャーがなくなったことで、「場を並べるようなデッキが活躍できる」としばしば言われます。今回は、ポケモンキャッチャーがリバースになった今の環境を考える上で、ポケモンキャッチャーが登場する以前の環境を見つめ直してみよう、というお話です。
僕があまり詳しく知らないデッキのことにも触れるので、その時点のトップメタデッキを熟知している方は、何言ってんだこいつ、といった感じで読んでもらえれば。
■場を並べ、その後は?
カメレアコロロというデッキから話を始めたいと思います。何度かこのブログでも名前が出ているデッキですが、2004年の前半期に猛威を奮った、カメックスex(PCG1)、レアコイル(ADV3)、エネコロロ(ADV1)という3枚のカードを用いたコンボデッキです。今のカメックスEXと同じような能力を持ったカメックスex、自分の場のエネぶんのダメージを飛ばすレアコイル、そして強力なドローエンジンのエネコロロの3枚によるこのコンボデッキは、ポケカ史上有数の美しい動きをするデッキでした。
なぜこのデッキを例に出したかというと、この前後からネットの普及によりメタゲームが多少安定し始めていたこと(かつ、ネット上に記録がある程度残っていること)、そして何より、このデッキが典型的な場を並べる系のコンボデッキだからです。
冒頭でも書きましたが、キャッチャーがなくなったことで、場を並べるようなデッキが活躍できるようになる、としばしば言われます。過去を見ても、それは恐らく間違っていません。
問題は、場を並べるデッキばかりが環境に溢れたときです。カメレアコロロが圧倒的なデッキパワーをもって環境を制圧したときに、プレイヤーが直面した問題もそれでした。
直後に大量のアンチカードが刷られたことでこの問題は一段落するのですが、それ以前はアンチカードもそこまでなく、カメレアコロロのミラーマッチが各所で多発していました。
■ミラーマッチとその戦略
少し前に、デッキタイプに関するコラム(http://ukinins.diarynote.jp/201301261329404320/)を書いたことがあります。
コンボデッキのミラーマッチの原則は、まず相手より先にコンボを完成させることです。アタッカーの数には(そしてもちろんサイド枚数にも)限りがあるため、先に殴りかかれば、相手より圧倒的優位に立てます。この点に限れば、何よりも構築とプレイを洗練させることが重要な課題となります。
展開速度を上げるため、フレンドボール(相手の場にいるポケモンの色と同じ色のポケモンをサーチ)が入るようになったのも、ミラーマッチが多かった証左でしょう。
ただ、この戦略には限界があります。相手より先にコンボを完成させるというのは、究極的には先手ゲーの様相さえ呈してくるからです。また、相手より先に殴った方が勝ち、というのでは、出遅れた場合に逆転の目がまったくなくなってしまいます。
そこで取られたミラーマッチ戦略が、相手のコンボそのものを阻害してしまう、というものでした。ウツボット(e3)が代表例です。ポケパワーにリバース効果を内蔵したこの2進化は、一度立ててしまえば、相手ベンチのカメックスexを狙い撃ちにして、相手のコンボを根本から否定してしまうことができました。正面からのぶつかり合いを望む相手に、これは明らかに効果的です。
これが、ベンチを並べるようなコンボデッキ環境の、ひとつの模範解答と言えるかもしれません。実はほとんど同じことが、この直前の2003年の秋にもありました。
その環境では、みんな大好きレックウザex(ADV3)をバシャーモ(ADV1)で加速して戦う、バシャレックというデッキがトップメタに君臨していました。ベンチにバシャーモを置き、トラッシュから加速して旧レックウザexのドラゴンバーストで攻撃するスタイルは、今のレックビールととてもよく似ています(ポケカのデザイン班は良い仕事をしています)。
果たして問題は、このミラーマッチをどうするか、という点にありました。レック先殴りゲーではどうしようもありません。
そこで編み出された解答が、バシャーモexでした。同じアチャモから進化する、2進化のexです。4エネで持っていたワザは、炎エネを2枚トラッシュして、相手の場1体に100ダメージ。狙撃ワザなので相手がベンチにいても関係ありません。そして無印バシャーモも旧レックウザexも、HPはぴったり100なのでした。
同じ進化ラインのこの2種のバシャーモを、これまた傑作の進化ライン、バシャーモ3枚バシャーモex2枚という2進化5枚にした構築が、事実上この環境を制しました。
この進化ラインの優れたところは、ほとんどの人がレックウザによる大艦巨砲主義デッキだと思っていたこのバシャレックから、レックを減らし、そして2進化を5枚搭載して攻撃の軸を2つ据えたことです。これによりミラーマッチに強くなっただけでなく、ベンチ攻撃の強さを改めて認識させたデッキでもありました。
余談ですが、このあたりのことは、3~4年前の環境でガブレンがなぜ強かったかの説明にもなります。周りがベンチを並べる動きをベースに作られているのに、そこだけ一方的にベンチ狙撃能力を持っていたら、お話にならないのは誰でもわかります。
■おわりに
ここまでつらつらと、場を並べる系のコンボデッキと、そのミラーマッチについて書いてきました。場を並べるというのはポケカの基本の動きですが、それひとつ取ってみても、色々な駆け引きがあることがわかります。
ポケカの歴史にコンボデッキは多いですが、しかしすべてが場を並べるコンボというわけでもありません。ロックデッキや、攻撃の軸をずらしたデッキ、はたまた正面衝突の殴り合いの細かいテクニックまで、キャッチャーのなかった環境からは、学べることがたくさんあります。
そこまで行くと話が長くなりすぎるので、今回はひとまず、ここまでということで。もしかしたら続くかもしれません。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
上とはまったく関係のない話ですが、将棋の竜王戦の中継ブログにポケモンが……w
ttp://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2013/10/post-9a90.html
共催が竜王戦と同じなんですね。でもそれポケカじゃないと思うよ!?
翻訳をやるとアクセスがすごいことになるのですが、今回は残念ながら翻訳ではありません。
11月からの新環境は、キャッチャーがなくなったことで、「場を並べるようなデッキが活躍できる」としばしば言われます。今回は、ポケモンキャッチャーがリバースになった今の環境を考える上で、ポケモンキャッチャーが登場する以前の環境を見つめ直してみよう、というお話です。
僕があまり詳しく知らないデッキのことにも触れるので、その時点のトップメタデッキを熟知している方は、何言ってんだこいつ、といった感じで読んでもらえれば。
■場を並べ、その後は?
カメレアコロロというデッキから話を始めたいと思います。何度かこのブログでも名前が出ているデッキですが、2004年の前半期に猛威を奮った、カメックスex(PCG1)、レアコイル(ADV3)、エネコロロ(ADV1)という3枚のカードを用いたコンボデッキです。今のカメックスEXと同じような能力を持ったカメックスex、自分の場のエネぶんのダメージを飛ばすレアコイル、そして強力なドローエンジンのエネコロロの3枚によるこのコンボデッキは、ポケカ史上有数の美しい動きをするデッキでした。
なぜこのデッキを例に出したかというと、この前後からネットの普及によりメタゲームが多少安定し始めていたこと(かつ、ネット上に記録がある程度残っていること)、そして何より、このデッキが典型的な場を並べる系のコンボデッキだからです。
冒頭でも書きましたが、キャッチャーがなくなったことで、場を並べるようなデッキが活躍できるようになる、としばしば言われます。過去を見ても、それは恐らく間違っていません。
問題は、場を並べるデッキばかりが環境に溢れたときです。カメレアコロロが圧倒的なデッキパワーをもって環境を制圧したときに、プレイヤーが直面した問題もそれでした。
直後に大量のアンチカードが刷られたことでこの問題は一段落するのですが、それ以前はアンチカードもそこまでなく、カメレアコロロのミラーマッチが各所で多発していました。
■ミラーマッチとその戦略
少し前に、デッキタイプに関するコラム(http://ukinins.diarynote.jp/201301261329404320/)を書いたことがあります。
コンボデッキのミラーマッチの原則は、まず相手より先にコンボを完成させることです。アタッカーの数には(そしてもちろんサイド枚数にも)限りがあるため、先に殴りかかれば、相手より圧倒的優位に立てます。この点に限れば、何よりも構築とプレイを洗練させることが重要な課題となります。
展開速度を上げるため、フレンドボール(相手の場にいるポケモンの色と同じ色のポケモンをサーチ)が入るようになったのも、ミラーマッチが多かった証左でしょう。
ただ、この戦略には限界があります。相手より先にコンボを完成させるというのは、究極的には先手ゲーの様相さえ呈してくるからです。また、相手より先に殴った方が勝ち、というのでは、出遅れた場合に逆転の目がまったくなくなってしまいます。
そこで取られたミラーマッチ戦略が、相手のコンボそのものを阻害してしまう、というものでした。ウツボット(e3)が代表例です。ポケパワーにリバース効果を内蔵したこの2進化は、一度立ててしまえば、相手ベンチのカメックスexを狙い撃ちにして、相手のコンボを根本から否定してしまうことができました。正面からのぶつかり合いを望む相手に、これは明らかに効果的です。
これが、ベンチを並べるようなコンボデッキ環境の、ひとつの模範解答と言えるかもしれません。実はほとんど同じことが、この直前の2003年の秋にもありました。
その環境では、みんな大好きレックウザex(ADV3)をバシャーモ(ADV1)で加速して戦う、バシャレックというデッキがトップメタに君臨していました。ベンチにバシャーモを置き、トラッシュから加速して旧レックウザexのドラゴンバーストで攻撃するスタイルは、今のレックビールととてもよく似ています(ポケカのデザイン班は良い仕事をしています)。
果たして問題は、このミラーマッチをどうするか、という点にありました。レック先殴りゲーではどうしようもありません。
そこで編み出された解答が、バシャーモexでした。同じアチャモから進化する、2進化のexです。4エネで持っていたワザは、炎エネを2枚トラッシュして、相手の場1体に100ダメージ。狙撃ワザなので相手がベンチにいても関係ありません。そして無印バシャーモも旧レックウザexも、HPはぴったり100なのでした。
同じ進化ラインのこの2種のバシャーモを、これまた傑作の進化ライン、バシャーモ3枚バシャーモex2枚という2進化5枚にした構築が、事実上この環境を制しました。
この進化ラインの優れたところは、ほとんどの人がレックウザによる大艦巨砲主義デッキだと思っていたこのバシャレックから、レックを減らし、そして2進化を5枚搭載して攻撃の軸を2つ据えたことです。これによりミラーマッチに強くなっただけでなく、ベンチ攻撃の強さを改めて認識させたデッキでもありました。
余談ですが、このあたりのことは、3~4年前の環境でガブレンがなぜ強かったかの説明にもなります。周りがベンチを並べる動きをベースに作られているのに、そこだけ一方的にベンチ狙撃能力を持っていたら、お話にならないのは誰でもわかります。
■おわりに
ここまでつらつらと、場を並べる系のコンボデッキと、そのミラーマッチについて書いてきました。場を並べるというのはポケカの基本の動きですが、それひとつ取ってみても、色々な駆け引きがあることがわかります。
ポケカの歴史にコンボデッキは多いですが、しかしすべてが場を並べるコンボというわけでもありません。ロックデッキや、攻撃の軸をずらしたデッキ、はたまた正面衝突の殴り合いの細かいテクニックまで、キャッチャーのなかった環境からは、学べることがたくさんあります。
そこまで行くと話が長くなりすぎるので、今回はひとまず、ここまでということで。もしかしたら続くかもしれません。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
上とはまったく関係のない話ですが、将棋の竜王戦の中継ブログにポケモンが……w
ttp://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2013/10/post-9a90.html
共催が竜王戦と同じなんですね。でもそれポケカじゃないと思うよ!?
コメント
しかも条件がゆるくなる一方という・・・
カードデザインのコンセプト自体はそこそこ一貫しているので、時代が繰り返すのは、ある意味では開発側の意図的な面もあります。カードパワーというのもけっこう相対的な尺度ですしね。
メタゲームから理論や法則めいたものを見て取るのが好きな人間としては、時代は繰り返してくれた方が面白かったりもしますw
ありがとうございます。
最近ポケカ遊べてませんが、うきにんさんの記事読むのは日々楽しみにしております
お読みいただきありがとうございます。
新裏になって以降のデッキはそこそこネット上に記録が残っているので、探してみるとけっこう面白いです。いつの時代も、先鋭的なギミックを思いつける人は本当に尊敬します。
>>六輝さん
お読みいただきありがとうございます。
最近のセットは意図的にカードコンセプトを維持しようとしているのがデザインからも読み取れて良いですね。
更新頻度はできるかぎり上げたいのですが、なかなか手が進みませんw