オセアニア選手権、あるいは代理戦争
オセアニア選手権、あるいは代理戦争
先週末、オーストラリア、シドニーで行われたOceania International Championships。
レギュレーションはスタンダードながら、地理的な要素もあって、そこまで注目度の高くなかった大会です。
が、終わってみれば象徴的なできごとがいくつもあり、非常に印象的な大会でした。

▼大会前あれこれ

しばらくExpandedで盛り上がっていた海外環境も、プレイヤーたちの興味はスタンダードに戻ってきました。
カードプールは、XY8からCrimson Invasion、つまりSM4まで。実はSM5に相当するUltra Prismが直前に発売になっているのですが、まだ使用可能カードプールに含まれないため、SM4環境の最終盤、ということになります。
代表的なデッキは、

・昨年末に海外スタンでも強いことが証明されたルガルガンGX/ゾロアークGX
・同じくゾロアークGXを使い倒し、Expandedでも強いグソクムシャGX/ゾロアークGX
・ダストダスデッキの代表格、グソクムシャGX/ダストダス
・GX戦で強いと話題のクワガノン/カプ・ブルルGX
・そして、海外発祥のデッキとして日本でも流行ったマッシブーンGX/ルガルガンGX

などなど、ゾロアークGXを中心としたメタゲームがぐるぐると回っていました。
そんな折、大会直前に、アメリカの強豪プレイヤー兼ライターのBrit Pybasが、こんな意味深なツイートをしていました。
https://twitter.com/bpybas/status/961680153557569536
「思い切って予想すると、今週末はサーナイトが復権してくると思う。ちゃんとしたデッキリストなら、ゾロアークとカプ・ブルルだらけの中でもかなりやれるはず」


▼サーナイト対マッシブーン、あるいは欧米間代理戦争

果たしてフタを開けてみれば、サーナイトGXは大躍進を遂げます。
そして、それはアメリカからではなく、ヨーロッパのチームの手によってでした。
サーナイトGX/ゾロアークGX/ミュウEX
一般的に使われるミュウツーではなく、変則的な再録によって実は使用可能なミュウEXを対マッシブーンGX用に据え、
ゾロアークラインもサブ的でなくかなり厚く積んだ、斬新なサーナイトデッキ。
デッキシェアされたヨーロッパのプレイヤーたちは、揃って予選で高い勝率を上げていきます。

そして、それを迎え撃ったのが、アメリカ勢の多くが持ち込んだマッシブーンGX/ルガルガンGX/オクタン。
GX同士の殴り合いで活躍する、みようみまねウソッキーをシークレットテクとし、
ゾロアークの群れを片っ端から刈り取っていきました。

画像①はPokeStatsから拝借した、トップ4の組み合わせ。
ヨーロッパ勢のサーナイト/ゾロアークvsアメリカ勢のマッシブーン/ルガルガン
という、さながらヨーロッパ対アメリカの代理戦争の様相が、オーストラリアのシドニーで繰り広げられたのでした。

▼Tord Reklev、現役最強プレイヤー

このDNでも何度か触れているのですが、
Tord Reklev(トード・レクレフと読むのが良いと思います)というノルウェー人プレイヤーがいます。
実はプレイ暦のかなり長いプレイヤーなのですが、
ここ最近の目立った実績はというと、

昨年夏の北米選手権(North America Internationals)優勝
昨年秋のヨーロッパ選手権(Europe Internationals)優勝

つまり、このオセアニア選手権(Oceania Internationals)を優勝すると、前人未到、前代未聞のInternationals3連覇がかかっていたのです。

そして結果は、ご存知の方も多いと思いますが、
今回も見事に優勝し、前代未聞の3連覇!
文字通り、現役最強のプレイヤーです。

▼サーナイトGX/ゾロアークGX/ミュウEX

そんな彼の使用デッキは以下。

4 ゾロア
4 ゾロアークGX
4 ラルトス
2 サーナイトGX
1 エルレイド
3 カプ・テテフGX
1 ギラティナ
1 ミュウEX

3 N
3 アズサ
2 プラターヌ博士
2 マオ
2 グズマ

4 ハイパーボール
4 時のパズル
3 ふしぎなアメ
2 シンカソーダ
2 フィールドブロアー
1 改造ハンマー
1 まんたんのくすり
1 こだわりハチマキ
1 かるいし
1 パラレルシティ

4 フェアリーエネルギー
4 ダブル無色エネルギー

(デッキは、たとえばPhilip Schulz https://twitter.com/LimitlessPhilip/status/962523319017721856 ほか複数人がツイートしていました)

一般的に想像するサーナイトGX/ゾロアークGXは、サーナイトラインが厚めで、ゾロアークはそのドロー補助、といった立ち位置です。
が、このレシピではそれが完全に逆転していて、メインがゾロアーク、そして、サーナイトはサブアタッカー的な役割として採用されています。フェアリーエネも、わずか4枚に抑えられています。
また、バトルサーチャーのない海外スタンでは、ゾロアークGXとの組み合わせで、時のパズルが日本以上に重宝されているのが伺えます。

サーナイトGXの強みとして、ゾロアークGXやマッシブーンGXといった、中打点系のカードに強いことが挙げられます。また、対ゾロアークで無類の強さを誇るエルレイドを無理なく採用できるのもメリットです。
1枚だけタッチされたミュウEXは、変則的な再録にょって、なぜか海外スタンでは使えるカード。一般的にはミュウツーが採用される枠です。
もちろんメインの役割は、いずれにしても対マッシブーンGXです。多くの場合、ライオットビートをコピーして相手のマッシブーンを吹き飛ばしていました。

プレイ面で面白かったのが、特に対マッシブーン戦であっても、初ターンのアズサではラルトスでなくゾロア中心に場に出していたことです。ゾロアークのためだけにシンカソーダが入っていることからも、このデッキがいかにゾロアークを重要視しているのかがわかります。初手率を重視したアズサ3枚も光ります。
マッシブーン側からすると、相手の場に立ち始めたゾロアークを倒せるときに倒しておくべきなのか、それともラルトスラインを早めに叩いておくべきなのか、判断が難しく、新しいデッキゆえの対処しづらさも、好成績の要因のひとつなのでしょう。特に決勝戦の3本目は、ミュウEXとまんたんのくすりがサイド落ちという状況ながらも、生き残ったサーナイトGXとカプ・テテフGXが相手のポケモンを巧みにきぜつさせていきました。

上述しましたが、このデッキはヨーロッパ勢にシェアされていたものです。Limitlessという、ポケカ情報サイトも運営しているチームです。サイトの側はここ最近ではかなり有名になってきているので、見たことのある方も多いかもしれません。

使用者は、優勝のTord Reklev、3位のPhilip Schulzをはじめ、トップ64に使用者のうち5人が入っています。彼らで稼ぎ出したポイントは計1450、賞金は計1万5千ドル。デッキのスペックがいかに優れていたかがわかるエピソードです。

▼その他のトピックス

・トップ32プレイヤーの出身国について

ヨーロッパ対アメリカの代理戦争めいていた今回のオセアニアですが、
実はトップ32の中には、欧米以外の国も入ってきています。
画像②はChristopher Schemanskeのツイートで見つけた、トップ32の国別割合。
10人のオーストラリア、7人のアメリカほか、ヨーロッパの国々が目立ちますが、
実はよく見てみると、
マレーシア3名
シンガポール2名
と、ポケカとは縁遠く思えるはずの東南アジアの国のプレイヤーも入っています。
日本から「海外ポケカ」と括るときには、アメリカなど欧米諸国ばかり連想しがちです。
が、たとえば昨年のWCSマスター優勝のDiego Cassiragaはアルゼンチンのプレイヤー。
ポケカはいまやグローバルコンテンツ。東南アジアや南米などの国のプレイヤーにも、ぜひ注目していきたいですね。

・Stephane Ivanoffの嘆き、ストリーミングと情報について

今回の大会も、もちろんtwitchでストリーミング中継が行われていました。大会に直接参加できない我々にとっては非常にありがたいことです。
が、そんな折、フランスの有名プレイヤーStephane Ivanoffが、こんなツイートをしていました。
https://twitter.com/lubyllule/status/962178230097768448
「ちょっとうんざりすること。予選のスイスラウンドが終わる頃までには、プレイヤーコミュニティの側は、時間をかけて、トップ32のデッキすべてと、誰がトップ8に入るかの情報を集めきる。にもかかわらず、中継のキャスターの側は、なんだか情報を間違えていたりする(オーストラリア人がトップ8にいるとか言ったり、デッキ情報を知らなかったり)」
「こっちは地球の反対側にいるんだから、現場にいる解説者が持ってる以上の情報があるわけないだろうに」
「これは何もキャスターを叩いているわけじゃない。何より僕はPooka(Kyle Sucevich)の大ファンなのだから。でも、たぶん現場には、コミュニケーション上か何かの問題があるんだろう。もしキャスター陣の側に、全員のデッキと正確な成績の情報があれば、中継の質はもっと良くなるはずだ」
「ラウンドとラウンドの間には、前ラウンド時点でのスタンディングを中継で見せるべきだと思う。キャスターが言ってもいいし、BGMが流れてるあいだに画面に映すだけでもいいと思う。少なくとも、「Day2の人気デッキ:サーナイト」みたいなトンチンカンな紹介をするよりは」
地味なツイートながら、100万回ぐらいいいねを押したくなる内容でした。
いまは日本国内でも、公式・自主イベント両面で、中継が活発化しています。どうすればよりよい中継ができるのか、考えてみるのは、決して無駄なことではないと思います。

▼おわりに

年があけ、海外でも、2月と5月に新弾が予定されており(2月のほうは発売済みですが)、いよいよ世界大会が遠く視界に見えてきます。
今年度のスタンダードのカードプールは、国内と海外とでは多くの面で違っています。ひょっとすると、日本勢にとっては苦戦の年になるかもしれません。
が、国内でも今では、公式でも自主イベントの側でも、情報に関して、多くの新しい試みが始まっています。
いろんな試行錯誤が今後も出てくると思います。が、その中で、良いものには素直に良いと応援してあげることが、プレイヤー個々人が、ポケカ界全体に向けてできる最初で最大のことなのかもしれません。

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