【翻訳】機械の行進――メタグロスGXでの準優勝と将来の展望
2017年6月22日 ポケモンカードゲーム コメント (2)
かなり久々の翻訳になります。今回はSixPrizesの無料記事から。
国内の公式大会戦線もあとは今週末を残すだけになりましたが、同じくアメリカの地区選手権マラソンも、あとは北米選手権を残すだけとなっています。
そのアメリカで6月上旬に話題になっていたのがメタグロスGX。
ゴミなだれダストダスがトップメタのはずの環境のなか、突如Madison Regionalsで準優勝という成績を残したこのデッキのことは、アメリカのみならず、こっちのDNでもちらほらと触れている人がいたほどです。
その使用者Christopher SchmanskeはSixPrizesの常連ライター(むしろ運営サイド)ですが、
今回はなんと、その記事が有料会員版でなく無料記事としてアップされています。
SixPrizesの記事で読める箇所はすべて読んでる僕にとっても、今回はめちゃめちゃ面白かったです。
新弾入りの全国大会前という絶妙(?)なタイミングではありますが、ぜひ読んで、いろいろ考えてもらえたらと思います。
いつもどおり、訳語の至らなさや誤訳の責任は、すべて僕うきにんに属します。
読みやすさを考慮して、訳文の省略や改行の変更があります。
(今回も例によって無許可翻訳なので、何かあればすぐに削除します)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
The March of the Machines: Madison Finalist Regional Run with Metagross-GX and Projections for Land Beyond
by Christopher Schemanske
Monday, June 5th, 2017
ttps://sixprizes.com/2017/06/05/the-march-of-the-machines/
■はじめに
おそらく今の私は、ポケカ界隈において、このところ覚えている限りでは一番恥ずかしい立ち位置に置かれている気がする。先週のMadison Regionalsでの5回戦終了後、私は、メタグロスGXは最悪だ、こんなクソデッキは2002年に世界大会に持ち込んで大失敗したメガニウムGR/ラフレシア以来だ、と言ってしまったのだ。しかも、その土曜の夜には、メタグロスデッキを「これまで使った中で最低」のデッキだと切って捨てた。
その後の状況は笑えるものだ。おそらくご存知の通り、その「最低」のデッキは今週、私にとってはずいぶんなものだった。Kyle Sucevichがトップ4決定後のインタビューに私を登場させずにはいられなかったほどには。
ある意味では、私の抱いていた感想は、ここ最近のポケカにおける「暗黙の状況」めいたものだったのだ。そしてGuardians Risingは、私たちのプレイの枠組みをどれほど変えてしまったことか〔※訳注:Guardians RisingはSM2に相当〕。私がメタグロスデッキのことを「ひどい」と言ったときには、決して、対戦上のスペックのことを言ったわけではなかったのだ。結局デッキ自体は対戦に勝ち残ってしまったのだから!
さて、このデッキにおける事実を書いていこう。
打点が150点止まりの2進化。ワザには3エネを必要とし、バトル場から逃げるようなことはまずない。その事実を補うために、巨大な錨が一匹と、それにまったく噛み合ってないアローラロコンのみちしるべが前提にあり、それがちっとも計算の立たないデッキのわずかな助けになっている。その点に関していえば、このデッキには、進化できるはずなのに全く進化しないたねポケモンが入っている。
このデッキを「ひどい」と言ったときに私が言わんとしていたのは、このデッキは、ここ最近で結果を残しているデッキの「型」にまったく当てはまらない、ということだったのだ。昨今のスピード重視のスタンダード環境の中で、私の頭は機能停止していたのだろう。
だがダストダス(SM2)の登場によって、環境は文字通り、速度を落としていった。1年前であれば、私のダンバルは進化する暇さえなく有象無象の夜の行進者たちによって金屑にされていただろう。アローラロコンみたいな初ターン専用機?その時ならば頭のおかしい考えだ。
ここ数年来、多くのプレイヤーが2進化の置かれた状況を嘆いてきた。ポケカの環境について書かせれば、われらがMichael Slutskyほど発言力のある人間はほとんどいないが、彼はここ数年に渡って、ポケカの環境について少なからぬ量の記事を書いてきた〔※原注 ttps://sixprizes.com/2017/03/21/decidedly-deciduous/#the-state-of-the-game〕。
だが正直に言って、その当時は、彼やその周辺が興味を抱いている点など、見向きもされないものだと思っていたのだ。
「ひどい」デッキだと私は言った、が、本当に「ひどい」デッキだったわけではもちろんない。とはいえ私はその一方で、ひどいデッキでも時には大会で優勝してしまうこともある、と思っている。
私が「ひどい」デッキと言うとき、基本的には、デッキ構築とデッキの根幹的な要素とがちぐはぐになっている、とか、デッキの勝っている理由が運がらみであるとか、そういった意味だ。このときの週末を例に挙げれば、メタグロスにとって上手いボルケニオン使いのプレイヤーというのは死刑宣告に等しかったはずだ。が、私は都合よくボルケニオンをすべてかわしたのだ。
たとえば、Phantom Forces〔※訳注:XY4に相当〕のEXが、当時のスタンダードではどれもある程度戦えたように、SM第2弾のGXたちも同じ道を歩んでいるように見える(ジャラランガを除けば)。これは何よりもカードデザインが優れている証であり、ありがたいことだ。
■機械的不適合:デッキの起源
さて、いったい全体何をどうすれば、大会用デッキとして、メタグロスGXこそ正しい選択だという結論に人は至るのだろうか? ましてやそのRegionalsが、私にとって、トップ16レースに滑り込むための最後の希望だというときに?
まず手始めに、その答えとなりそうなのは明らかに、私には絶好の友人軍団がいたからということになるだろう。金曜の夕方5時ごろ、心の中を一瞬メタグロスが横切ったときに。確かに私とJohn Kettlerは、一緒にやったSuper Rod Castのとある放送回の中で、メタグロスにはポテンシャルがあると言った。が、かといって私の中の使用候補には上がっていなかったのだ。
事実、その時点での私の使用候補には、せいぜいダークライEX/ハクリューが紛れ込んでいた程度だ。正直に言えば、あの時、Wes HollenbergやJoey Ruttinger、そしてXander Peroその他もろもろといった連中が、どういう話の方向にまとまっていったのか定かではない。だがともかく、私には調整用のメタグロスが残された。
「調整」という言葉は少し大げさだ。私は弟と何度か対戦をしてみたが、メタグロス同士だけでやっていたわけではない。メタグロスは何とダストダス/ジジーロンデッキを引き裂いてしまった。もしかしてすごいことじゃないだろうか? 私がどうしたものかと思っていたところにXander Peroが戻ってきてくれて、2人で最終型のリストを組み上げた。
私は結局、前の週に使ったのとほぼ同じMレックウザデッキと、このメタグロスとのあいだで揺れ動き続けた。会場へ出発する直前までだ。最後の最後に私は、たぶんこのデッキなら戦えるだろうと判断したものの、実は大会が始まるまで、このリストでは1ゲームも対戦しなかったのだ。
4 ダンバル
3 メタング
4 メタグロスGX
2 カプ・テテフGX
1 アローラロコン
1 ダダリン
4 プラターヌ博士
3 N
2 フラダリ
1 アズサ
1 オカルトマニア
1 カリン
1 ゴジカ
1 ククイ博士
4 ハイパーボール
4 バトルサーチャー
3 まんたんのくすり
3 ふしぎなアメ
2 フィールドブロアー
1 レスキュータンカ
4 こだわりハチマキ
8 鋼エネルギー
2 超エネルギー
今になって思えば、変えたい箇所はあまりにたくさんある。ダダリンは最悪だった。特性の擬似プラスパワーは1度しか使わなかったし、ワザはもっと使いやすいのが他にある。致命的だったのが逃げるコスト2で、ずいぶん初ターンみちしるべの邪魔になっていた、というかフラダリされるか倒されない限り、この錨はバトル場に突き刺さり続けていた。
ほかには、ふしぎなアメ3はありえないほど間抜けな選択だった。メタング1枚を4枚目のアメに変えておくべきだっただろう。
カリンについて言えば、土曜の朝には抜こうかどうか考えていたが、このカード無しではここまでの結果は残せなかったはずだ。アズサは半分ぐらいの対戦でサイド落ちしていたような印象だが、きちんと使えた対戦では非常に便利な変幻自在のカードだった。
シェイミEX無しは慣れない感じだが、単純にこのデッキにはそこまでのベンチスペースがない。ククイ博士は、エーフィGXなどとやりあうときにはよく働いてくれた。理論上はククイ+こだわりハチマキ+ダダリンでラランテスGXまで倒せる。実際にこの組み合わせを使うことはできたものの、できたのは週末を通じて一度だけだった。
■全方位探査:上位までの道のり
デッキリストは上に書いたとおりだ。変更したい部分はあるものの、それでも結果に文句を言うつもりはまったくない。大会結果は下記を見てほしい。
Madison Regionals / マスター523人
1回戦:対ギャラドス(1-1)
2回戦:対ラランテスGX(2-0)
3回戦:対エーフィGX/ダストダス/ブースター(0-2)
4回戦:対アローラキュウコンGX(2-0)
5回戦:対ゲッコウガ(2-0)
6回戦:対ダストダス/ジジーロンGX(2-0)
7回戦:対MレックウザEX(2-0)
8回戦:対クワガノン/カプ・ブルルEX/クワガノンGX(2-1)
9回戦:ID
初日スイスラウンド:6-1-2、27位
10回戦:対ビークイン/ゾロアーク(2-0)
11回戦:対ダストダス/ジジーロンGX(2-0)
12回戦:対ビークイン/ブースター/ゾロアーク(2-1)
13回戦:ID
14回戦:対エーフィGX/ダストダス(1-1)
2日目スイスラウンド:9-1-4、5位
予選スイスラウンドは、個々のゲームで見ると20勝6敗だった。かなり安定した成績だ。予選スイスで唯一の負けマッチはブースター入りのエーフィ/ダストダスを踏んだときで、マッチ終了後は本当にこの週末を無かったことにしたいぐらいだった〔※訳注:唯一の負けは初日の早い段階〕。日曜にやっている店舗大会を探しはじめたぐらいだ。このときAlex Hillに言った言葉はこんな感じだった。「いま2-1-1だけど、残りの5回戦、ボルケニオンを踏まずに行けるとは思えないね」すると彼はこう返した。「それなら最終戦で踏んでおいてIDすればいい」あろうことか9回戦目がボルケニオンだった。そしてID。
13回戦目には面白いジレンマがあった。Michael Pramawatとのマッチアップだったが、私はここをIDしておいて14回戦目も引き分けにするか、もしくは13か14回戦目のどちらかで勝っておけばトップ8が確定だった。私はここをIDして自分の運に賭けることにしたが、14回戦目では下当たりになってしまった。すんでのところで作戦が大失敗になるところだった。が、対戦結果は結局引き分けになり、しかも我々2人ともがトップ8に残ることができた。2日制はいろいろと面白いことが起こりうる(たとえばRahul Reddyは2日目の5戦すべてで上か下の階段に当たっていた)ため、IDに関する判断が難しい。今回はたまたま上手くいったということになる。
この週末を通じて、デッキの動きは幾度となく崩壊の危機にあった、が、何とか持ちこたえた。トップ8でAzur Griegoのボルケニオンを踏まずに済んだのは運に恵まれたといえる。トップ8からはこのような感じだ。
準々決勝:対ビークイン/ゾロアーク(2-0)
準決勝:対ゾロアーク/ジジーロンGX(2-0)
決勝:ビークイン/ブースター/ゾロアーク(1-2)
準決勝と決勝は公式のストリーミングで中継されていたし、そのうちYoutubeかどこかにアップされるだろうと思う。準々決勝の相手も準決勝の相手も、きちんと250ダメージを出せる手段は持っておらず、そこまでつらい戦いにはならなかった。が、決勝のMichael Pramawatのブースターにだけは、思い通りにさせてもらえなかった。
決勝戦については、こうプレイすればよかったといった話をいろいろ聞かされたが、ここでその話をいちいち書くつもりはない。1ゲーム目には勝ったが、そこから2ゲームを続けて落とした。不運にも3ゲーム目では時間が対戦を左右した。もう少し時間が残っていれば相手のデッキ切れも狙えたが、私が2ゲーム目を的確にやっていれば、そもそもそういう話にはなっていない。文句を言うつもりはないし、どうにもならないこともある。
■全速前進:メキシコ選手権、その他イベント、そして北米選手権
今週末は改めてビークインが存在感を示したし、この流れがすぐに消えるとは思えない。オドリドリやカリンといった対策カードにも限界があり、バトル場に居座るHP250の壁を落とせるカードも限られている。将来的にメタグロスはある程度使われるとは思うが、私としては、遅い環境でならクワガノンのほうが優れているし、2進化デッキの主流になれると思う。
この週末で得られた基本的な考えは:
・アローラロコンは素晴らしいカードだった。サーチ能力はいわば、サポーターを2回使っているようなものだ。大会前まではこの動きをまったく評価していなかったが、時が経つにつれてこのカードの虜になっていった。とりわけ、EX/GXメインで戦うようなデッキでは、サイド7枚戦を強いることができる点は、いくら強調しても足りないほどだ〔※訳注:サイド7枚という言い方は向こうの記事でよく出てきます。日本でいうサイドを奇数にする動き〕。
・シアトルでは環境がダストダス中心に回っていた〔※訳注:シアトルはこの記事で扱われているマディソンの1週間前の大会〕が、今回は一点集中にはならなかった。かつての速度重視のデッキは鳴りを潜め、少なからぬデッキが、より遅いアプローチを選んだ。これは奇妙なバランスともいえる――いまやダストダスは倒される側になり、速度の遅い2進化デッキが環境に参入してきた。とするならスピードダークライといった速いデッキには絶好の環境と言えるが、そんな速いデッキのグッズ多投のごちそうを目の前にして、ダストダスが悪い選択だと言えるだろうか?
・ラランテスやカプ・ブルルといったデッキに乗り換えたプレイヤーが一定数いたのは興味深い点だった。それらのデッキは大会前の予想では評判が良くなかったにもかかわらず、どこからともなく現れてきた。これもまた、ポケカにおけるソーシャルメディアの影響の例なのだろう。5年前ではありえなかったことだ。
・このメタグロスのデッキには、私がしばらくやっていなかった要素を多く含んでいる。たとえば、スタジアムカードが入っていない。私はある種のカウンター的な動きとしてスタジアムを多少入れておくのが好きだが、その点に関しては、フィールドブロアーが非常に良いカードだ。あえて入れるならばパラレルシティだろうが、それでもせいぜい1枚だろう。私にとってもうひとつおかしなところは、バトルサーチャー4枚だ。最後にバトルサーチャーを4枚使ったのはSt.Louis〔※訳注:3月の大会〕になるが、どう考えても変なことを言っているように思える。ただし、現環境で大事なのは、デッキを創造するときは想像的に考えること、だ。
結果的にこのデッキの使用者は、マスターで、準優勝、17位、トップ128という成績だった。が、似たような構築がシニアで2位を取れたし、マスターでも、Connor Fintonが違った構築で9位に入っていた。今週末、このデッキは間違いなく、良い意味で注目の的になっていた。今後がどうなるか、楽しみでならない。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
以上になります。お読みいただきありがとうございました。
実は記事自体はもう少しだけ続くのですが、メイン部分はほぼすべて訳してあります。
ちなみに、文中で扱われているMadison Regionalsの結果は、下記:
http://www.pokemon.com/us/play-pokemon/madison-regionals-2017/tcg-masters/
で見られます。この準優勝のメタグロス以外にも、マスターではMichael PramawatやDaniel Altavillaといった著名なプレイヤーが入賞していますし、
記事の最後で触れられているシニア準優勝のメタグロスも必見です。
著者自身は、完成形では一度も練習していないなんて記事中で言ったりしていますが、そんなのはどうでもよくて、
大事なのは、ロコンでゆっくり立てる2進化なんて誰もが環境的に間に合わないと思っていた(ら実はデッキ的に成立した)、というところだと思います。
国内でも、環境後期でクワガノンブルルが評価されていきましたが、
文中の言葉を借りるならば、「昨今のスピード重視のスタンダード環境の中で、私の頭は機能停止していた」人は、もちろん著者だけではないはずです。
環境の「型」や「枠」の中からは、なかなか環境の速度というのは見えにくく、その一方で、単に型から外れたデッキや思考をすれば良いわけでもないのでしょう。その難しさがいろいろと詰まった、とても良い記事だったと思います。
6月30日からは、いよいよ世界大会の環境を占う北米選手権(North American International Championships)が始まります。
毎年いろいろと話題のデッキが登場する大会でもあります。時間に余裕のある人は、ぜひ中継も追いかけてみてください。
国内の公式大会戦線もあとは今週末を残すだけになりましたが、同じくアメリカの地区選手権マラソンも、あとは北米選手権を残すだけとなっています。
そのアメリカで6月上旬に話題になっていたのがメタグロスGX。
ゴミなだれダストダスがトップメタのはずの環境のなか、突如Madison Regionalsで準優勝という成績を残したこのデッキのことは、アメリカのみならず、こっちのDNでもちらほらと触れている人がいたほどです。
その使用者Christopher SchmanskeはSixPrizesの常連ライター(むしろ運営サイド)ですが、
今回はなんと、その記事が有料会員版でなく無料記事としてアップされています。
SixPrizesの記事で読める箇所はすべて読んでる僕にとっても、今回はめちゃめちゃ面白かったです。
新弾入りの全国大会前という絶妙(?)なタイミングではありますが、ぜひ読んで、いろいろ考えてもらえたらと思います。
いつもどおり、訳語の至らなさや誤訳の責任は、すべて僕うきにんに属します。
読みやすさを考慮して、訳文の省略や改行の変更があります。
(今回も例によって無許可翻訳なので、何かあればすぐに削除します)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
The March of the Machines: Madison Finalist Regional Run with Metagross-GX and Projections for Land Beyond
by Christopher Schemanske
Monday, June 5th, 2017
ttps://sixprizes.com/2017/06/05/the-march-of-the-machines/
■はじめに
おそらく今の私は、ポケカ界隈において、このところ覚えている限りでは一番恥ずかしい立ち位置に置かれている気がする。先週のMadison Regionalsでの5回戦終了後、私は、メタグロスGXは最悪だ、こんなクソデッキは2002年に世界大会に持ち込んで大失敗したメガニウムGR/ラフレシア以来だ、と言ってしまったのだ。しかも、その土曜の夜には、メタグロスデッキを「これまで使った中で最低」のデッキだと切って捨てた。
その後の状況は笑えるものだ。おそらくご存知の通り、その「最低」のデッキは今週、私にとってはずいぶんなものだった。Kyle Sucevichがトップ4決定後のインタビューに私を登場させずにはいられなかったほどには。
ある意味では、私の抱いていた感想は、ここ最近のポケカにおける「暗黙の状況」めいたものだったのだ。そしてGuardians Risingは、私たちのプレイの枠組みをどれほど変えてしまったことか〔※訳注:Guardians RisingはSM2に相当〕。私がメタグロスデッキのことを「ひどい」と言ったときには、決して、対戦上のスペックのことを言ったわけではなかったのだ。結局デッキ自体は対戦に勝ち残ってしまったのだから!
さて、このデッキにおける事実を書いていこう。
打点が150点止まりの2進化。ワザには3エネを必要とし、バトル場から逃げるようなことはまずない。その事実を補うために、巨大な錨が一匹と、それにまったく噛み合ってないアローラロコンのみちしるべが前提にあり、それがちっとも計算の立たないデッキのわずかな助けになっている。その点に関していえば、このデッキには、進化できるはずなのに全く進化しないたねポケモンが入っている。
このデッキを「ひどい」と言ったときに私が言わんとしていたのは、このデッキは、ここ最近で結果を残しているデッキの「型」にまったく当てはまらない、ということだったのだ。昨今のスピード重視のスタンダード環境の中で、私の頭は機能停止していたのだろう。
だがダストダス(SM2)の登場によって、環境は文字通り、速度を落としていった。1年前であれば、私のダンバルは進化する暇さえなく有象無象の夜の行進者たちによって金屑にされていただろう。アローラロコンみたいな初ターン専用機?その時ならば頭のおかしい考えだ。
ここ数年来、多くのプレイヤーが2進化の置かれた状況を嘆いてきた。ポケカの環境について書かせれば、われらがMichael Slutskyほど発言力のある人間はほとんどいないが、彼はここ数年に渡って、ポケカの環境について少なからぬ量の記事を書いてきた〔※原注 ttps://sixprizes.com/2017/03/21/decidedly-deciduous/#the-state-of-the-game〕。
だが正直に言って、その当時は、彼やその周辺が興味を抱いている点など、見向きもされないものだと思っていたのだ。
「ひどい」デッキだと私は言った、が、本当に「ひどい」デッキだったわけではもちろんない。とはいえ私はその一方で、ひどいデッキでも時には大会で優勝してしまうこともある、と思っている。
私が「ひどい」デッキと言うとき、基本的には、デッキ構築とデッキの根幹的な要素とがちぐはぐになっている、とか、デッキの勝っている理由が運がらみであるとか、そういった意味だ。このときの週末を例に挙げれば、メタグロスにとって上手いボルケニオン使いのプレイヤーというのは死刑宣告に等しかったはずだ。が、私は都合よくボルケニオンをすべてかわしたのだ。
たとえば、Phantom Forces〔※訳注:XY4に相当〕のEXが、当時のスタンダードではどれもある程度戦えたように、SM第2弾のGXたちも同じ道を歩んでいるように見える(ジャラランガを除けば)。これは何よりもカードデザインが優れている証であり、ありがたいことだ。
■機械的不適合:デッキの起源
さて、いったい全体何をどうすれば、大会用デッキとして、メタグロスGXこそ正しい選択だという結論に人は至るのだろうか? ましてやそのRegionalsが、私にとって、トップ16レースに滑り込むための最後の希望だというときに?
まず手始めに、その答えとなりそうなのは明らかに、私には絶好の友人軍団がいたからということになるだろう。金曜の夕方5時ごろ、心の中を一瞬メタグロスが横切ったときに。確かに私とJohn Kettlerは、一緒にやったSuper Rod Castのとある放送回の中で、メタグロスにはポテンシャルがあると言った。が、かといって私の中の使用候補には上がっていなかったのだ。
事実、その時点での私の使用候補には、せいぜいダークライEX/ハクリューが紛れ込んでいた程度だ。正直に言えば、あの時、Wes HollenbergやJoey Ruttinger、そしてXander Peroその他もろもろといった連中が、どういう話の方向にまとまっていったのか定かではない。だがともかく、私には調整用のメタグロスが残された。
「調整」という言葉は少し大げさだ。私は弟と何度か対戦をしてみたが、メタグロス同士だけでやっていたわけではない。メタグロスは何とダストダス/ジジーロンデッキを引き裂いてしまった。もしかしてすごいことじゃないだろうか? 私がどうしたものかと思っていたところにXander Peroが戻ってきてくれて、2人で最終型のリストを組み上げた。
私は結局、前の週に使ったのとほぼ同じMレックウザデッキと、このメタグロスとのあいだで揺れ動き続けた。会場へ出発する直前までだ。最後の最後に私は、たぶんこのデッキなら戦えるだろうと判断したものの、実は大会が始まるまで、このリストでは1ゲームも対戦しなかったのだ。
4 ダンバル
3 メタング
4 メタグロスGX
2 カプ・テテフGX
1 アローラロコン
1 ダダリン
4 プラターヌ博士
3 N
2 フラダリ
1 アズサ
1 オカルトマニア
1 カリン
1 ゴジカ
1 ククイ博士
4 ハイパーボール
4 バトルサーチャー
3 まんたんのくすり
3 ふしぎなアメ
2 フィールドブロアー
1 レスキュータンカ
4 こだわりハチマキ
8 鋼エネルギー
2 超エネルギー
今になって思えば、変えたい箇所はあまりにたくさんある。ダダリンは最悪だった。特性の擬似プラスパワーは1度しか使わなかったし、ワザはもっと使いやすいのが他にある。致命的だったのが逃げるコスト2で、ずいぶん初ターンみちしるべの邪魔になっていた、というかフラダリされるか倒されない限り、この錨はバトル場に突き刺さり続けていた。
ほかには、ふしぎなアメ3はありえないほど間抜けな選択だった。メタング1枚を4枚目のアメに変えておくべきだっただろう。
カリンについて言えば、土曜の朝には抜こうかどうか考えていたが、このカード無しではここまでの結果は残せなかったはずだ。アズサは半分ぐらいの対戦でサイド落ちしていたような印象だが、きちんと使えた対戦では非常に便利な変幻自在のカードだった。
シェイミEX無しは慣れない感じだが、単純にこのデッキにはそこまでのベンチスペースがない。ククイ博士は、エーフィGXなどとやりあうときにはよく働いてくれた。理論上はククイ+こだわりハチマキ+ダダリンでラランテスGXまで倒せる。実際にこの組み合わせを使うことはできたものの、できたのは週末を通じて一度だけだった。
■全方位探査:上位までの道のり
デッキリストは上に書いたとおりだ。変更したい部分はあるものの、それでも結果に文句を言うつもりはまったくない。大会結果は下記を見てほしい。
Madison Regionals / マスター523人
1回戦:対ギャラドス(1-1)
2回戦:対ラランテスGX(2-0)
3回戦:対エーフィGX/ダストダス/ブースター(0-2)
4回戦:対アローラキュウコンGX(2-0)
5回戦:対ゲッコウガ(2-0)
6回戦:対ダストダス/ジジーロンGX(2-0)
7回戦:対MレックウザEX(2-0)
8回戦:対クワガノン/カプ・ブルルEX/クワガノンGX(2-1)
9回戦:ID
初日スイスラウンド:6-1-2、27位
10回戦:対ビークイン/ゾロアーク(2-0)
11回戦:対ダストダス/ジジーロンGX(2-0)
12回戦:対ビークイン/ブースター/ゾロアーク(2-1)
13回戦:ID
14回戦:対エーフィGX/ダストダス(1-1)
2日目スイスラウンド:9-1-4、5位
予選スイスラウンドは、個々のゲームで見ると20勝6敗だった。かなり安定した成績だ。予選スイスで唯一の負けマッチはブースター入りのエーフィ/ダストダスを踏んだときで、マッチ終了後は本当にこの週末を無かったことにしたいぐらいだった〔※訳注:唯一の負けは初日の早い段階〕。日曜にやっている店舗大会を探しはじめたぐらいだ。このときAlex Hillに言った言葉はこんな感じだった。「いま2-1-1だけど、残りの5回戦、ボルケニオンを踏まずに行けるとは思えないね」すると彼はこう返した。「それなら最終戦で踏んでおいてIDすればいい」あろうことか9回戦目がボルケニオンだった。そしてID。
13回戦目には面白いジレンマがあった。Michael Pramawatとのマッチアップだったが、私はここをIDしておいて14回戦目も引き分けにするか、もしくは13か14回戦目のどちらかで勝っておけばトップ8が確定だった。私はここをIDして自分の運に賭けることにしたが、14回戦目では下当たりになってしまった。すんでのところで作戦が大失敗になるところだった。が、対戦結果は結局引き分けになり、しかも我々2人ともがトップ8に残ることができた。2日制はいろいろと面白いことが起こりうる(たとえばRahul Reddyは2日目の5戦すべてで上か下の階段に当たっていた)ため、IDに関する判断が難しい。今回はたまたま上手くいったということになる。
この週末を通じて、デッキの動きは幾度となく崩壊の危機にあった、が、何とか持ちこたえた。トップ8でAzur Griegoのボルケニオンを踏まずに済んだのは運に恵まれたといえる。トップ8からはこのような感じだ。
準々決勝:対ビークイン/ゾロアーク(2-0)
準決勝:対ゾロアーク/ジジーロンGX(2-0)
決勝:ビークイン/ブースター/ゾロアーク(1-2)
準決勝と決勝は公式のストリーミングで中継されていたし、そのうちYoutubeかどこかにアップされるだろうと思う。準々決勝の相手も準決勝の相手も、きちんと250ダメージを出せる手段は持っておらず、そこまでつらい戦いにはならなかった。が、決勝のMichael Pramawatのブースターにだけは、思い通りにさせてもらえなかった。
決勝戦については、こうプレイすればよかったといった話をいろいろ聞かされたが、ここでその話をいちいち書くつもりはない。1ゲーム目には勝ったが、そこから2ゲームを続けて落とした。不運にも3ゲーム目では時間が対戦を左右した。もう少し時間が残っていれば相手のデッキ切れも狙えたが、私が2ゲーム目を的確にやっていれば、そもそもそういう話にはなっていない。文句を言うつもりはないし、どうにもならないこともある。
■全速前進:メキシコ選手権、その他イベント、そして北米選手権
今週末は改めてビークインが存在感を示したし、この流れがすぐに消えるとは思えない。オドリドリやカリンといった対策カードにも限界があり、バトル場に居座るHP250の壁を落とせるカードも限られている。将来的にメタグロスはある程度使われるとは思うが、私としては、遅い環境でならクワガノンのほうが優れているし、2進化デッキの主流になれると思う。
この週末で得られた基本的な考えは:
・アローラロコンは素晴らしいカードだった。サーチ能力はいわば、サポーターを2回使っているようなものだ。大会前まではこの動きをまったく評価していなかったが、時が経つにつれてこのカードの虜になっていった。とりわけ、EX/GXメインで戦うようなデッキでは、サイド7枚戦を強いることができる点は、いくら強調しても足りないほどだ〔※訳注:サイド7枚という言い方は向こうの記事でよく出てきます。日本でいうサイドを奇数にする動き〕。
・シアトルでは環境がダストダス中心に回っていた〔※訳注:シアトルはこの記事で扱われているマディソンの1週間前の大会〕が、今回は一点集中にはならなかった。かつての速度重視のデッキは鳴りを潜め、少なからぬデッキが、より遅いアプローチを選んだ。これは奇妙なバランスともいえる――いまやダストダスは倒される側になり、速度の遅い2進化デッキが環境に参入してきた。とするならスピードダークライといった速いデッキには絶好の環境と言えるが、そんな速いデッキのグッズ多投のごちそうを目の前にして、ダストダスが悪い選択だと言えるだろうか?
・ラランテスやカプ・ブルルといったデッキに乗り換えたプレイヤーが一定数いたのは興味深い点だった。それらのデッキは大会前の予想では評判が良くなかったにもかかわらず、どこからともなく現れてきた。これもまた、ポケカにおけるソーシャルメディアの影響の例なのだろう。5年前ではありえなかったことだ。
・このメタグロスのデッキには、私がしばらくやっていなかった要素を多く含んでいる。たとえば、スタジアムカードが入っていない。私はある種のカウンター的な動きとしてスタジアムを多少入れておくのが好きだが、その点に関しては、フィールドブロアーが非常に良いカードだ。あえて入れるならばパラレルシティだろうが、それでもせいぜい1枚だろう。私にとってもうひとつおかしなところは、バトルサーチャー4枚だ。最後にバトルサーチャーを4枚使ったのはSt.Louis〔※訳注:3月の大会〕になるが、どう考えても変なことを言っているように思える。ただし、現環境で大事なのは、デッキを創造するときは想像的に考えること、だ。
結果的にこのデッキの使用者は、マスターで、準優勝、17位、トップ128という成績だった。が、似たような構築がシニアで2位を取れたし、マスターでも、Connor Fintonが違った構築で9位に入っていた。今週末、このデッキは間違いなく、良い意味で注目の的になっていた。今後がどうなるか、楽しみでならない。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
以上になります。お読みいただきありがとうございました。
実は記事自体はもう少しだけ続くのですが、メイン部分はほぼすべて訳してあります。
ちなみに、文中で扱われているMadison Regionalsの結果は、下記:
http://www.pokemon.com/us/play-pokemon/madison-regionals-2017/tcg-masters/
で見られます。この準優勝のメタグロス以外にも、マスターではMichael PramawatやDaniel Altavillaといった著名なプレイヤーが入賞していますし、
記事の最後で触れられているシニア準優勝のメタグロスも必見です。
著者自身は、完成形では一度も練習していないなんて記事中で言ったりしていますが、そんなのはどうでもよくて、
大事なのは、ロコンでゆっくり立てる2進化なんて誰もが環境的に間に合わないと思っていた(ら実はデッキ的に成立した)、というところだと思います。
国内でも、環境後期でクワガノンブルルが評価されていきましたが、
文中の言葉を借りるならば、「昨今のスピード重視のスタンダード環境の中で、私の頭は機能停止していた」人は、もちろん著者だけではないはずです。
環境の「型」や「枠」の中からは、なかなか環境の速度というのは見えにくく、その一方で、単に型から外れたデッキや思考をすれば良いわけでもないのでしょう。その難しさがいろいろと詰まった、とても良い記事だったと思います。
6月30日からは、いよいよ世界大会の環境を占う北米選手権(North American International Championships)が始まります。
毎年いろいろと話題のデッキが登場する大会でもあります。時間に余裕のある人は、ぜひ中継も追いかけてみてください。
コメント
この記事を読んで、メタグロスに着手しました。かなり読みにくい記事だったので、
翻訳ありがたいです。
このデッキの肝は、アローラロコン採用ですね。デッキ全体のたねポケの逃げコストを1以下にすると、めっちや使いやすいです。
実際に使ってみて分かったのですが、みちしるべとアルゴリズムGXを絡めた駆け引き(例えば、相手のNを誘発すること)が面白いですね。
呼んだ気がしましたw
おっしゃる通り、アローラロコンが肝というのは間違いないですね。
メタグロスに限った話ではないので、ある種の2進化用ギミックとして定着していく可能性もあると思います。
もっとも、メタグロスのスペック自体も異常ですし、逃げるコスト2(ネクロズマetc)のカードとの絡みも含め、このあたりの構築の流れも追っていきたいですね。