【コラム】11年前のマグマ団をめぐるメタゲーム
【コラム】11年前のマグマ団をめぐるメタゲーム
【コラム】11年前のマグマ団をめぐるメタゲーム
 来週末にはコンセプトパックが発売になるので、その前に、と思いました。
 おそらくこの時代に関しては、大和さんが60cardsで詳細に書くと思うのですが、マグマ団的には今がタイムリーな気もするので、僕個人の考えるところを書いてみます。
 古いカードが多く登場しますが、各リンク先のテキストを眺めながら読んでいただければ。
 コンセプトパックのアクア団マグマ団や、メタゲームを考える上で、ちょっとでも参考になればと思います(絶対ならないと思うのですが)。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 2004年夏、マグマ団は文字通り世界の頂点に立ちました。僕の記憶が間違っていなければ、この年のWCS3部門(ジュニア・シニア・マスター)はすべて日本人のマグマ団が優勝しています。
 なぜそんなことができたのか。もちろんデッキが(そしてプレイヤーが)強かったからなのですが、マグマ団が活躍できた背景は、見た目よりもほんの少しだけ複雑です

 当時のマグマ団はどんなデッキだったか。たとえば参考になるのは以下のリンクです。
ttp://www5.pf-x.net/~flatzone/pokedex/index.php?%A5%DE%A5%B0%A5%DE%C3%C4
(旧グラードンに関しては、比較画像が散々出回っていたので、すでに効果の知られたカードだと思います)
 リンク先の一番下のリストが大和さんのWCS2004優勝デッキ。そのひとつ上のリストが、バトルロードサマー2004の地区優勝の(確か)ももっちのデッキ

 ぱっと見、よく似たリストです。同じマグマなので当然なのですが、実はこのふたつ、背景にしていたカードプールが少し違います。
 当時の2004年夏の国内大会の環境は、PCG2まで。
 一方でWCS2004は、ADV4まで。
 日本のほうが2セットぶん多かったのです。たとえば上のデッキリストでも、バトルサーチャー(PCG2に収録)の有無にその違いが現れています。

 とはいいながらも、メタゲームの動きはマグマ団にとって、おおよそ似たようなもの、と言えたかもしれません。

 少し遠回りして、前年の2003年秋に目を向けてみます。そこはほぼバシャレック一強の環境。加速源のバシャーモとドローエンジンのエネコロロにバックアップされたレックウザEXが高出力で殴るこのデッキは、完成度も強さも図抜けていました。
(参考:ttp://www5.pf-x.net/~flatzone/pokedex/index.php?%A5%D0%A5%B7%A5%E3%A5%B3%A5%ED%A5%ED%A5%EC%A5%C3%A5%AF)

 そして2004年春、PCG1で登場したカメックスEXによって、カメレアコロロというポケカ史上有数の美しいコンボデッキが作られます。HP100前後が通常の進化ポケの基準だった当時にあって、非EXが100ダメージ以上を平然と飛ばしてきてはゲームにならず、メタゲームは例によってカメレアコロロの一強環境になります。
(参考:ttp://www5.pf-x.net/~flatzone/pokedex/index.php?%A5%AB%A5%E1%A5%EC%A5%A2%A5%B3%A5%ED%A5%ED)

 このあたりの年度では、インターネットで情報が出回り始めた頃ということもあって、ミラーマッチの研究が非常に進むのですが、それはさておき。

 実はマグマ団のカードは、2003年の秋の大会直後には発売されています。

 しかし最初は、その強さはあまり認識されませんでした。なぜなら上述のとおり、当時は進化ポケモンの全盛期。バシャーモやサーナイトといった強力なシステムを有した進化ポケモンが数多くいて、それを立てられるだけのドロー系カードも揃っていました。
 それゆえ、たねで殴るマグマ団は、最初は注目を浴びなかったのです。

 それが最初に陽の目を浴びたのは、当時まだ存在していたハーフレギュからでした。当時はADVに強い1進化がいたことや、Wレインボーエネの存在によって、ハーフでは打点の高い1進化ポケモンを立てて戦うデッキが一定数存在していました。

 そこにマグマ団が参戦します。
 そしていざ使ってみると(あるいは使われてみると)気づくのですが、マグマ団のグラードンは、当時の平均的な1進化と同等のスペックを、あるいはそれ以上のスペックを単体で有していました。前述のとおり、当時の進化ポケモンのHPは、非EXならば100が基準です。そしてマグマ団のグラードンは、悪エネルギーやマグマエネルギーのバックアップもあり、ちょくげきだん→すりつぶすの組み合わせで安定して100ダメージ前後を当てることができました。こうなると、勝負は見えています。
 ハーフで「マグマウィニー」と呼ばれたそのデッキがスタンダードに登場するのは、もはや時間の問題でした。

 そして迎える2004年の夏の国内大会。こう書くと、当時の国内はマグマ一強だったのか、と見えるかもしれません。が、実際はそうではありませんでした。カメレアコロロはまだ強く、またPCG1で登場したピジョットの規格外なドロー能力はほとんどの2進化デッキを支えていました。徐々に注目され始めていたルンパカルゴも、隙がなく極めて強力なデッキでした。
 それでも、マグマはそのスペックの高さもあって、この夏まで第一線の強さを保っていたのでした。上の地区大会優勝が、その証拠になっています。

 そして、この夏の優勝者たちがWCS2004に臨みます。
 WCS2004のレギュレーションは、海外に合わせてADV4まで。日本で言えば、2003年秋大会の後ぐらいの環境でした。
 ここでピンときた方もいるかもしれません。2003年の秋大会の直後、アクアマグマのセットが発売していたにもかかわらず、その時はまだバシャレックが主流の環境でした。が、しかし、当時は強さに気づかれなかったのですが、そこにはマグマ団というデッキが存在し得ていたのです。まるでタイムマシンのような振り返りの視点。マグマ団ならばバシャレックに勝てる。海外より2セットぶん先行した時間によって、日本勢はこの結論の下でWCSに乗り込みました。

 そして案の定、海外プレイヤーたちは、バシャレックやサーナイトを携えてWCSに来ていたのです。
 当時はインターネットで情報交流が始まったばかり。国内ならともかく、海外勢が他国の情報に目を向けるなんて無かった時代です。
 圧倒的な情報格差と時間の猶予の差。それこそが、あれほどの結果を収めた最強デッキを作り出したのでした。

 では、日本勢の駆るマグマは無敵だったのか。ある意味ではそうなのですが、海外勢とて、一筋縄ではいきませんでした。
 WCS2004のマスターのベスト4を上から並べると、
 マグマ
 バシャレック
 マグマ
 マグマ
 となっています。こう見るとマグマは強すぎます。が、その波をかきわけて、バシャレックが準優勝をしているのです。
 使用者は、今もSixPrizesや60cardsでライターとして活動しているChris Fulop。
 デッキは以下、
 ttp://bulbapedia.bulbagarden.net/wiki/Blaziken_Tech_%28TCG%29
 で見ることができます。
 
 このデッキが素晴らしかったのは、まず、レックウザEXメインの高出力デッキだと思われていたバシャレックを、レックではなくバシャーモEXメインのデッキにしたことです。
 バシャーモEXは、4エネながらどこでも100ダメージを与えるワザを持っていました。これによって、2進化を並べあう中でも、相手の加速用のバシャーモやサーナイト(どちらもHP100)を先に焼き払い、その差で勝つことができたのです。また、どこでも100というダメージは、マグマ団のグラードン(同じくHP100)にとっても、非常にきびしいものでした。

 それに加えてこのデッキには、とあるカードが101ラインで入っていました。
 そのカードとは、キレイハナ(画像も参照)。
キレイハナ 草 HP100

【ポケパワー】ヒーリングダンス
このパワーは、自分の番に1回使うことができる。自分のポケモン1匹のダメージカウンターを、2個とりのぞく。このポケモンが特殊状態なら、または、この番に、すでに自分の別のポケモンの「ヒーリングダンス」を使っていたなら、このパワーを使うことはできない。

草 ミラクルパウダー 10
コインを1回投げオモテなら、特殊状態の中から1つを選び、相手をその状態にする。

草無無 ソーラービーム 50
 何よりも、そのポケパワーです。グラードンのワザすりつぶすの「ダメージを与えるとき、すでに相手にダメージカウンターが2個以上のっているなら」というテキスト部分を完全に否定してくるその効果は、マグマ団にとって悪夢以外の何物でもありません。
 しかもマルチエネルギーが入っていたため、このキレイハナは攻撃にも出られたのです。マグマ団のグラードンの弱点は、言うまでもなく草でした。

 Chris Fulopが対マグマを意識していたかは定かではありません。ただ、どうであれ、このバシャレックは対マグマへの回答をほとんど備えていました。それこそが、日本勢のマグマをなぎ倒して準優勝という結果を残せた理由であり、そこに疑問の余地はありません。

 そして、それを乗り越えて優勝した大和さんのマグマの素晴らしいところ。それはポケモンリバースを多投していたことでした。
 ポケモンリバースは、当時ハーフでは使われていたものの、スタンダードではそこまで評価の高くないカードでした。2進化主流の環境では入れるスペースのないことが多かったという理由もありますし、当時は先殴りのテンポゲーよりも、場の展開が重要視されていた時代でもありました。しかしポケモンリバースは、マグマがテンポゲーを仕掛ける上でも強く、また対2進化でシステムを潰す上でも抜群に効果を発揮しました。……たとえば、決勝戦で相手のベンチに出てきたナゾノクサなんかを。
 その強さをきちんと見抜いていたのは、流石としか言いようがありません。

 このあたりのメタゲームの動きや構築の際のカード選択は、今見ても本当に素晴らしいなと思います。
 この文章を書いたのも、Chris Fulopのバシャレックと大和さんのマグマを紹介したかったという部分が大きいです。
 言うまでもなく、ここまでの文章には書き落としや僕の誤解がかなりあるはずです。そして、現環境の分析にもたぶん役立たないでしょう。
 それでも、昔のデッキであれ、洗練されたデッキの意図や構築を眺めるのはとても楽しいですし、その知識や考え方はきっと無駄にはならないだろうと思います。

コメント

キルミーあかさき
2015年1月25日13:12

タッチカードや構築についての、このレベルの議論は大変参考になります。
おそらくアクマグ以外のところで活かされそうですが(笑)
今は情報格差はほとんどなくなっているため、今度はネットにはない、コミュニティーやリアルでしかわからない情報というところが情報戦においては鍵になりそうですね。タッチの選択も、膨大な情報をしっかり処理して取捨選択し、どのようなデッキを見るのか、そもそもそのタッチが機能するためにはどのような構築にしないといけないのか、というのは、まだまだ精進していかないとなと思います。

うきにん
2015年1月25日19:54

>>おトンさん
確かにリアルコミュニティのメリットデメリットは、特に最近強く感じますね。
カードや構築の選択も、結果がすべてを正当化してしまう部分はあるのですが、それでも本当にその選択の効果があるのかないのか、結果だけにとらわれずにきちんと見極めたいところですね。

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