今回は60cards.netから。マイケル・マーティンへのインタビューをご紹介します。
とはいっても、まずその人って誰? となるのが普通です。実際、僕もほとんど知りませんでした。
ただ読んでみると、海外ポケカのルーリング側を率いるすごい人だとわかります。WCSに参加経験のある人なら、海外ポケカはルーリングがしっかりしているなあ、という印象を持つかもしれません。そんな海外ではルーリングがどのように行われているのか、その裏話を聞ける、非常に珍しいインタビューになっています。
また、最近はバトルフェスタのジャッジが話題になっていますが、今回はマイケル・マーティン自身がWCSヘッドジャッジを務めただけあって、ジャッジの観点からも興味深い内容になっています。
その意味ではタイムリーでもあり、かつ本当に面白い内容です。デッキ分析やレポートに飽きてきた人にも、ぜひ読んでいただきたい記事です。
内容が内容なので訳注がいっぱいぶらさがってますが、どうかご容赦を。
いつもどおり、訳語の至らなさや誤訳の責任は、すべて僕うきにんに属します。
読みやすさを考慮して、訳文の省略や改行の変更があります。
(今回も例によって無許可翻訳なので、何かあればすぐに削除します)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
exclusive interview with Michael Martin
by 60cards.net (Martin Kaninsky)
Thursday, November 20, 2014
ttp://www.60cards.net/en/60cc/blog/user/20/article/91
皆さん、今回は、公式イベント主催者にして、リーグオーナー、世界大会とアメリカ選手権ヘッドジャッジ、ルールチームメンバー、チーム・コンペンディウムメンバー、PokegGymオーナー、Pojoの管理権限保有者でもある、マイケル・マーティンをご紹介します。
ポケモンと出会ったいきさつはどういったものだったでしょうか。ポケモンカードを始めた経緯と、なぜ"PokePop"というハンドルネームを選んだのかも教えていただけますか?
あの当時、私の息子は小学校1年生だったんですが、夏休みの聖書学校から帰ってきた息子は、一緒に大量のポケモンカードを持って帰ってきたんです。もっと買ってもらえないかとねだる息子に、私は説明しました。このカードは一部分であって、もう少し買おうと思ったら、ゲーム全体を知らないといけない。ファイルに閉じて置いておくようなものではないよ、と。その息子も、今年には大学を卒業します。
それで、私はポケモンカードのことを知ろうと、情報を載せていたウェブサイトをいくつか見てみました。PojoとPokeGymがそれです。
フォーラムに参加するにはハンドル名が必要でした。長くに渡ってこの名前を使うことになるとは思っていなかったものですから、ポケモン絡みで、なおかつ自分が父親であるとわかるものにしようとしました。私はスタン・リーの大ファンでしたので、スタン・リーが自分のキャラクター名でよくやるように、韻を踏んだ名前にしようと考えました。"PokePop"にしたのはそういった理由です。
〔※訳注:スタン・リーは説明不要のアメコミ界の大御所原作者。PokePopという名前で父親だとわかるのは、Popがアメリカのスラングで父親を指すため〕
プレイよりもジャッジに力を注ごうと思ったのはいつからですか?
難しい質問ですね。私は競技レベルでプレイしたことは一度もなくて、いつもただ楽しくやっていました。その一方で、PokeGymでルーリング面に特化した管理者権限を持つに至るほど、私はネット上にいるようになっていました。
そこのコンペンディウムでやっていた仕事のせいで、ウィザーズ社が私を、2001年の夏の大会に「ゲスト」ジャッジとして呼んだのです。それが、私がジャッジを務めた正真正銘最初の大会でした。最初のです。
〔※訳注:コンペンディウムとはttp://compendium.pokegym.net/のこと。ポケカのルーリングやエラッタがまとめてある。その内容を管理しているのが、後で出てくるチーム・コンペンディウム。ウィザーズ社は当時、海外でポケカの販売や大会運営を行っていた〕
株式会社ポケモンで働いているのですか?
いいえ、TPCiの社員ではありません。ただ、関わりはかなり持っています。公式イベント主催者としては、私は個人として仕事を請け負っています。ジャッジや、リーグオーナーや、ルーリングチームは、ボランティアで行っています。株ポケとはその他もろもろもあるのですが、基本的にはすべてボランティアです。おそらく株式会社ポケモンとは、これまでのあいだで、7から10枚くらいの契約書を交わしたのではないでしょうか。
〔※訳注:TPCiはザ・ポケモン・カンパニー・インターナショナルの略。海外でいう株ポケ。以下、文中に株ポケと出てきた場合、すべてTPCiを意味する。「個人として仕事を~」の原語は、"an independent contractor"〕
あなたはウィザーズ社とポケモンUSAの下でそれぞれジャッジを経験されていますが、何か違いはありましたか?
実際はウィザーズ社の下でジャッジを務めたのは数回だけです。私が公式イベント主催者になったのは2007年ですが、そのときにはもう、ウィザーズ社から株式会社ポケモンに移行していました。ジャッジの観点からすれば、あまり違いはありません。どちらの公式イベントチームも、楽しく、フェアで、切磋琢磨できる大会づくりを目指しています。
チーム・コンペンディウムとルーリングチームの違いは何なのでしょう。
チーム・コンペンディウムは、5人(いつもメンバーは5人で固定しています)からなる完全独立のグループで、ポケモンカードゲーム・ルーリング・コンペンディウムという名前で知られる公式ルール文書をマネジメントしています。文書の所有者は我々です。
元々は、ウィザーズ社が作成していたルーリングを我々が毎週チャットの会話の中で整理していたところから始まったのですが、それが転じて、株式会社ポケモンの研究開発部門と直接一緒に仕事をして、ルーリングを作成する側になりました。
とはいえ、ウィザーズ社(最初のコミュニティフォーラムの管理者として)や株式会社ポケモン(ルールチームやイベント主催者として)と、どれほど近い距離で一緒に仕事をしていても、チーム・コンペンディウムは常に独立した存在です。
ルールチームはチーム・コンペンディウムと株式会社ポケモンの研究開発部門からなります。我々は株ポケ側に、ルーリングについての疑問と我々の見解を持ち込みますが、最終決定するのは株ポケの研究開発部門です。最終決定の際、必要時には、日本のクリーチャーズとも話し合いが行われます。
そして、承認後のルーリングが我々のところに届き、コンペンディウムに掲載されるのです。端的に言えば、共同事業でしょうか。
ルールチームのメンバーは何人ですか?
チーム・コンペンディウムの5人と株ポケ研究開発部門のマネージャーが1人、計6人です。ポケモンのパーティみたいですね。
あなたの今のポジションは?
個別に言えば、私は、
・公式イベント主催者
・リーグオーナー
・世界大会とアメリカ選手権のヘッドジャッジ
・ルールチームのメンバー
・チーム・コンペンディウムのメンバー
・PokeGymオーナー
・Pojoの管理権限保有者
他に何か言い残しがあったでしょうか?
〔※訳注:おそらくここでいうリーグオーナーは、League、つまり向こうの店舗大会の運営を指す〕
ルーリングに関して、日本側と協力はしていますか?
日本側(クリーチャーズ)とはTPCiが協力しています。我々はそことは関わっていません。
ヤドキング(ネオ1)のような、誤った翻訳のケースがあります。何が問題だったと考えますか?(ヤドキング問題についてはhttp://ukinins.diarynote.jp/201311101245287454/を参照)
何が起きたのかは知らないのですが、それについての仮説ならいくつか耳にしたことがあります。
ひとつは、単に誤訳だったというものです。確かにウィザーズ社には一定量の誤訳やエラーがあります。しかしながら、MtGを背景にしたウィザーズ社の基本的なスタンスは、そのエラーがプレイ不可能かぶっ壊れでもない限りは、「印刷どおりにプレイする」というものです。ウィザーズ社は、あのエラーはプレイ不可でもぶっ壊れでもない(異論は出そうですが)と判断し、ヤドキングはそのままプレイされることになった、というわけです。
もうひとつの仮説は、ウィザーズ社がトレーナーカードを強力すぎると感じていた、というものです。そのためヤドキングは、トレーナーの使用率を押し下げるために意図的に誤訳された、という話でした。
個人的には、ひとつめの仮説のほうを信じたいです。何かの失敗を都合よく説明するような陰謀論や悪意のある話は、信じないようにしています。
10年後のポケカはどうなっていると思いますか?
そんな先のことはわかりません。発売から15年経ってもいまだにポケカが成功を収めているだなんて、最初は誰が想像できたでしょうか?
プレイヤーが大会でペナルティを受ける上で、最大の要因になっていることは何だと思いますか?
実際、何らかの間違いというのは一部分でしかありません。プレイヤーたちは、ルーリングやカードの相互作用をかなり理解するようになってきたと思います。それこそチーム・コンペンディウムの第一目標なのですから、それは喜ばしいことです。ただ、ミスプレイは常に起こります。場に働いている効果や、サポーターを使ったかどうかや、エネを貼ったか(または貼っていないか)はよく見落とされます。そういった多くの理由で対戦は混乱し、対処が必要な状況になります。
イカサマは存在するか? 残念ながら存在します。それが特定の場所だけの問題だとは思いません。誰かが常に目を光らせていなければいけませんが、イカサマをする側も、そうやすやすと特定をさせてはくれないでしょう。
失格の決定を下す際、何を念頭に置いていますか?
個々のケースはそれぞれ違いますから、答えるのは難しいです。ただ、失格裁定は厳重に用いられなければならず、安易に下されるべきものではない、ということは言えます。
失格裁定を下したり、失格裁定を出すよう勧告するようなときは、問題になっている場面の発生例を集め、何が起こったかについて、誤解が生まれないようにします。また、複数のジャッジに違反行為の現場を確認させ、報復行為が起こらないよう努めています。
〔※訳注:失格裁定の原語は"disqualification"。日本でも、略して"DQ"と呼ばれることが多い。「勧告」という語が出てくるが、おそらく他ジャッジへの助言のようなもの〕
あるとき世界大会で、ペナルティガイドラインに沿うなら失格裁定となってしまうような場面がありました。しかし私は状況を調査して、情状酌量の余地があると判断しました。そのため、代わりにゲームロスの裁定にするよう勧告したのです。
私はTPCiのマネージャー相手に直接この勧告を押し通す必要がありましたが(何せこれは世界大会なのです)、私はそうしましたし、結果は私の勧告どおりになりました。嬉しいことに、翌年のペナルティガイドラインは、私の勧告に沿う形で改定されたのです。
失格裁定を好んで出したい人など誰もいません。それは単に、起こるときには起こってしまうたぐいのものなのです。
他のジャッジに言いたいことはありますか?
我々は常にプレイヤーのために存在しているということを忘れてはいけません。すべてのプレイヤーのために、です。つまるところ、我々の提供している環境が、楽しく、かつフェアなものであるよう努めなければならないのです。そして動きは素早く! 可能なかぎり早くラウンドを回しましょう。誰も12時間もプレイしたくないのですから。ものごとを動かし続けましょう。
現行のペナルティは適正だと思いますか? 数年間の、あるいは無期限の出場停止についてはどう思いますか?
株式会社ポケモンから私のところに話が下りてこない領域のひとつが、出場停止についてです。そのため、正直なところ、個々の出場停止の長さがどう決められているのか私は言えません。
MtGではプロプレイヤーが存在できていますが、ポケモンカードではまだプロとして生活できる人がいないのはなぜだと考えますか?
大きな違いは、ターゲットにしている年齢層だと思います。ポケカの競技イベントが対象にしているのは、間違いなく、若いプレイヤーたちです。年齢が高めのポケカプレイヤーを一時的に競技イベントから締め出してしまったウィザーズ/ハズブロー社は極端でしたが。しかし、確かにウィザーズ社は、ポケモンカードのイベントが、子供たちとその家族に喜ばれるものであるよういつも努めていたのです。
ただ現在では状況は変わっていて、ポケモンカードの年齢層は、上のほうにシフトしてきています(発売から15年という期間の影響が出始めてきたのでしょう)。もしかすると、将来的にはプロプレイヤーも可能になるかもしれません。
次の世界大会がどこになるかご存知ですか?
仮に知っていたとしても、それは言えません。ただ、私も知らないので、推測ならできます。今日(11月19日)、削除されるまでの短時間でしたが、ポケモンのウェブサイト上にボストンという文字が出ているのを多くの人が目にしました。
アナウンスをするにはまだ未決定の部分があるのでしょうが、あの「リーク」に基づくなら、次の場所はボストンなのでしょう。ただ私は本当に「知らない」のです。
インタビューの時間と、大会やジャッジの裏側についての興味深い考察、どうもありがとうございました!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
以上になります。お読みいただきありがとうございました。
繰り返しになりますが、他の記事では絶対に読めない内容だと思います。僕も知らないことが多くあって、読みながら勉強になりました。
唯一の欠点は、内容とタイトルが地味すぎることですw
あまりに地味なので和訳タイトルを「WCSヘッドジャッジ特別インタビュー」とかにしたら多少はアクセスが増えるかと思ったのですが、そんな程度の変更で増えるアクセスなら、最初から読みたい人だけ読む記事でいいや、という若干の開き直りはあります。
向こうは向こうで問題がないわけではないのでしょう。それでもこういった記事が、日本の公式イベントや自主イベントとの比較対象になれば、と強く思います。
とはいっても、まずその人って誰? となるのが普通です。実際、僕もほとんど知りませんでした。
ただ読んでみると、海外ポケカのルーリング側を率いるすごい人だとわかります。WCSに参加経験のある人なら、海外ポケカはルーリングがしっかりしているなあ、という印象を持つかもしれません。そんな海外ではルーリングがどのように行われているのか、その裏話を聞ける、非常に珍しいインタビューになっています。
また、最近はバトルフェスタのジャッジが話題になっていますが、今回はマイケル・マーティン自身がWCSヘッドジャッジを務めただけあって、ジャッジの観点からも興味深い内容になっています。
その意味ではタイムリーでもあり、かつ本当に面白い内容です。デッキ分析やレポートに飽きてきた人にも、ぜひ読んでいただきたい記事です。
内容が内容なので訳注がいっぱいぶらさがってますが、どうかご容赦を。
いつもどおり、訳語の至らなさや誤訳の責任は、すべて僕うきにんに属します。
読みやすさを考慮して、訳文の省略や改行の変更があります。
(今回も例によって無許可翻訳なので、何かあればすぐに削除します)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
exclusive interview with Michael Martin
by 60cards.net (Martin Kaninsky)
Thursday, November 20, 2014
ttp://www.60cards.net/en/60cc/blog/user/20/article/91
皆さん、今回は、公式イベント主催者にして、リーグオーナー、世界大会とアメリカ選手権ヘッドジャッジ、ルールチームメンバー、チーム・コンペンディウムメンバー、PokegGymオーナー、Pojoの管理権限保有者でもある、マイケル・マーティンをご紹介します。
ポケモンと出会ったいきさつはどういったものだったでしょうか。ポケモンカードを始めた経緯と、なぜ"PokePop"というハンドルネームを選んだのかも教えていただけますか?
あの当時、私の息子は小学校1年生だったんですが、夏休みの聖書学校から帰ってきた息子は、一緒に大量のポケモンカードを持って帰ってきたんです。もっと買ってもらえないかとねだる息子に、私は説明しました。このカードは一部分であって、もう少し買おうと思ったら、ゲーム全体を知らないといけない。ファイルに閉じて置いておくようなものではないよ、と。その息子も、今年には大学を卒業します。
それで、私はポケモンカードのことを知ろうと、情報を載せていたウェブサイトをいくつか見てみました。PojoとPokeGymがそれです。
フォーラムに参加するにはハンドル名が必要でした。長くに渡ってこの名前を使うことになるとは思っていなかったものですから、ポケモン絡みで、なおかつ自分が父親であるとわかるものにしようとしました。私はスタン・リーの大ファンでしたので、スタン・リーが自分のキャラクター名でよくやるように、韻を踏んだ名前にしようと考えました。"PokePop"にしたのはそういった理由です。
〔※訳注:スタン・リーは説明不要のアメコミ界の大御所原作者。PokePopという名前で父親だとわかるのは、Popがアメリカのスラングで父親を指すため〕
プレイよりもジャッジに力を注ごうと思ったのはいつからですか?
難しい質問ですね。私は競技レベルでプレイしたことは一度もなくて、いつもただ楽しくやっていました。その一方で、PokeGymでルーリング面に特化した管理者権限を持つに至るほど、私はネット上にいるようになっていました。
そこのコンペンディウムでやっていた仕事のせいで、ウィザーズ社が私を、2001年の夏の大会に「ゲスト」ジャッジとして呼んだのです。それが、私がジャッジを務めた正真正銘最初の大会でした。最初のです。
〔※訳注:コンペンディウムとはttp://compendium.pokegym.net/のこと。ポケカのルーリングやエラッタがまとめてある。その内容を管理しているのが、後で出てくるチーム・コンペンディウム。ウィザーズ社は当時、海外でポケカの販売や大会運営を行っていた〕
株式会社ポケモンで働いているのですか?
いいえ、TPCiの社員ではありません。ただ、関わりはかなり持っています。公式イベント主催者としては、私は個人として仕事を請け負っています。ジャッジや、リーグオーナーや、ルーリングチームは、ボランティアで行っています。株ポケとはその他もろもろもあるのですが、基本的にはすべてボランティアです。おそらく株式会社ポケモンとは、これまでのあいだで、7から10枚くらいの契約書を交わしたのではないでしょうか。
〔※訳注:TPCiはザ・ポケモン・カンパニー・インターナショナルの略。海外でいう株ポケ。以下、文中に株ポケと出てきた場合、すべてTPCiを意味する。「個人として仕事を~」の原語は、"an independent contractor"〕
あなたはウィザーズ社とポケモンUSAの下でそれぞれジャッジを経験されていますが、何か違いはありましたか?
実際はウィザーズ社の下でジャッジを務めたのは数回だけです。私が公式イベント主催者になったのは2007年ですが、そのときにはもう、ウィザーズ社から株式会社ポケモンに移行していました。ジャッジの観点からすれば、あまり違いはありません。どちらの公式イベントチームも、楽しく、フェアで、切磋琢磨できる大会づくりを目指しています。
チーム・コンペンディウムとルーリングチームの違いは何なのでしょう。
チーム・コンペンディウムは、5人(いつもメンバーは5人で固定しています)からなる完全独立のグループで、ポケモンカードゲーム・ルーリング・コンペンディウムという名前で知られる公式ルール文書をマネジメントしています。文書の所有者は我々です。
元々は、ウィザーズ社が作成していたルーリングを我々が毎週チャットの会話の中で整理していたところから始まったのですが、それが転じて、株式会社ポケモンの研究開発部門と直接一緒に仕事をして、ルーリングを作成する側になりました。
とはいえ、ウィザーズ社(最初のコミュニティフォーラムの管理者として)や株式会社ポケモン(ルールチームやイベント主催者として)と、どれほど近い距離で一緒に仕事をしていても、チーム・コンペンディウムは常に独立した存在です。
ルールチームはチーム・コンペンディウムと株式会社ポケモンの研究開発部門からなります。我々は株ポケ側に、ルーリングについての疑問と我々の見解を持ち込みますが、最終決定するのは株ポケの研究開発部門です。最終決定の際、必要時には、日本のクリーチャーズとも話し合いが行われます。
そして、承認後のルーリングが我々のところに届き、コンペンディウムに掲載されるのです。端的に言えば、共同事業でしょうか。
ルールチームのメンバーは何人ですか?
チーム・コンペンディウムの5人と株ポケ研究開発部門のマネージャーが1人、計6人です。ポケモンのパーティみたいですね。
あなたの今のポジションは?
個別に言えば、私は、
・公式イベント主催者
・リーグオーナー
・世界大会とアメリカ選手権のヘッドジャッジ
・ルールチームのメンバー
・チーム・コンペンディウムのメンバー
・PokeGymオーナー
・Pojoの管理権限保有者
他に何か言い残しがあったでしょうか?
〔※訳注:おそらくここでいうリーグオーナーは、League、つまり向こうの店舗大会の運営を指す〕
ルーリングに関して、日本側と協力はしていますか?
日本側(クリーチャーズ)とはTPCiが協力しています。我々はそことは関わっていません。
ヤドキング(ネオ1)のような、誤った翻訳のケースがあります。何が問題だったと考えますか?(ヤドキング問題についてはhttp://ukinins.diarynote.jp/201311101245287454/を参照)
何が起きたのかは知らないのですが、それについての仮説ならいくつか耳にしたことがあります。
ひとつは、単に誤訳だったというものです。確かにウィザーズ社には一定量の誤訳やエラーがあります。しかしながら、MtGを背景にしたウィザーズ社の基本的なスタンスは、そのエラーがプレイ不可能かぶっ壊れでもない限りは、「印刷どおりにプレイする」というものです。ウィザーズ社は、あのエラーはプレイ不可でもぶっ壊れでもない(異論は出そうですが)と判断し、ヤドキングはそのままプレイされることになった、というわけです。
もうひとつの仮説は、ウィザーズ社がトレーナーカードを強力すぎると感じていた、というものです。そのためヤドキングは、トレーナーの使用率を押し下げるために意図的に誤訳された、という話でした。
個人的には、ひとつめの仮説のほうを信じたいです。何かの失敗を都合よく説明するような陰謀論や悪意のある話は、信じないようにしています。
10年後のポケカはどうなっていると思いますか?
そんな先のことはわかりません。発売から15年経ってもいまだにポケカが成功を収めているだなんて、最初は誰が想像できたでしょうか?
プレイヤーが大会でペナルティを受ける上で、最大の要因になっていることは何だと思いますか?
実際、何らかの間違いというのは一部分でしかありません。プレイヤーたちは、ルーリングやカードの相互作用をかなり理解するようになってきたと思います。それこそチーム・コンペンディウムの第一目標なのですから、それは喜ばしいことです。ただ、ミスプレイは常に起こります。場に働いている効果や、サポーターを使ったかどうかや、エネを貼ったか(または貼っていないか)はよく見落とされます。そういった多くの理由で対戦は混乱し、対処が必要な状況になります。
イカサマは存在するか? 残念ながら存在します。それが特定の場所だけの問題だとは思いません。誰かが常に目を光らせていなければいけませんが、イカサマをする側も、そうやすやすと特定をさせてはくれないでしょう。
失格の決定を下す際、何を念頭に置いていますか?
個々のケースはそれぞれ違いますから、答えるのは難しいです。ただ、失格裁定は厳重に用いられなければならず、安易に下されるべきものではない、ということは言えます。
失格裁定を下したり、失格裁定を出すよう勧告するようなときは、問題になっている場面の発生例を集め、何が起こったかについて、誤解が生まれないようにします。また、複数のジャッジに違反行為の現場を確認させ、報復行為が起こらないよう努めています。
〔※訳注:失格裁定の原語は"disqualification"。日本でも、略して"DQ"と呼ばれることが多い。「勧告」という語が出てくるが、おそらく他ジャッジへの助言のようなもの〕
あるとき世界大会で、ペナルティガイドラインに沿うなら失格裁定となってしまうような場面がありました。しかし私は状況を調査して、情状酌量の余地があると判断しました。そのため、代わりにゲームロスの裁定にするよう勧告したのです。
私はTPCiのマネージャー相手に直接この勧告を押し通す必要がありましたが(何せこれは世界大会なのです)、私はそうしましたし、結果は私の勧告どおりになりました。嬉しいことに、翌年のペナルティガイドラインは、私の勧告に沿う形で改定されたのです。
失格裁定を好んで出したい人など誰もいません。それは単に、起こるときには起こってしまうたぐいのものなのです。
他のジャッジに言いたいことはありますか?
我々は常にプレイヤーのために存在しているということを忘れてはいけません。すべてのプレイヤーのために、です。つまるところ、我々の提供している環境が、楽しく、かつフェアなものであるよう努めなければならないのです。そして動きは素早く! 可能なかぎり早くラウンドを回しましょう。誰も12時間もプレイしたくないのですから。ものごとを動かし続けましょう。
現行のペナルティは適正だと思いますか? 数年間の、あるいは無期限の出場停止についてはどう思いますか?
株式会社ポケモンから私のところに話が下りてこない領域のひとつが、出場停止についてです。そのため、正直なところ、個々の出場停止の長さがどう決められているのか私は言えません。
MtGではプロプレイヤーが存在できていますが、ポケモンカードではまだプロとして生活できる人がいないのはなぜだと考えますか?
大きな違いは、ターゲットにしている年齢層だと思います。ポケカの競技イベントが対象にしているのは、間違いなく、若いプレイヤーたちです。年齢が高めのポケカプレイヤーを一時的に競技イベントから締め出してしまったウィザーズ/ハズブロー社は極端でしたが。しかし、確かにウィザーズ社は、ポケモンカードのイベントが、子供たちとその家族に喜ばれるものであるよういつも努めていたのです。
ただ現在では状況は変わっていて、ポケモンカードの年齢層は、上のほうにシフトしてきています(発売から15年という期間の影響が出始めてきたのでしょう)。もしかすると、将来的にはプロプレイヤーも可能になるかもしれません。
次の世界大会がどこになるかご存知ですか?
仮に知っていたとしても、それは言えません。ただ、私も知らないので、推測ならできます。今日(11月19日)、削除されるまでの短時間でしたが、ポケモンのウェブサイト上にボストンという文字が出ているのを多くの人が目にしました。
アナウンスをするにはまだ未決定の部分があるのでしょうが、あの「リーク」に基づくなら、次の場所はボストンなのでしょう。ただ私は本当に「知らない」のです。
インタビューの時間と、大会やジャッジの裏側についての興味深い考察、どうもありがとうございました!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
以上になります。お読みいただきありがとうございました。
繰り返しになりますが、他の記事では絶対に読めない内容だと思います。僕も知らないことが多くあって、読みながら勉強になりました。
唯一の欠点は、内容とタイトルが地味すぎることですw
あまりに地味なので和訳タイトルを「WCSヘッドジャッジ特別インタビュー」とかにしたら多少はアクセスが増えるかと思ったのですが、そんな程度の変更で増えるアクセスなら、最初から読みたい人だけ読む記事でいいや、という若干の開き直りはあります。
向こうは向こうで問題がないわけではないのでしょう。それでもこういった記事が、日本の公式イベントや自主イベントとの比較対象になれば、と強く思います。
コメント
シンプルながらいい言葉だなと思います
・・・まあポケカだけに言えることではないからでしょうけど(ぶつぶつ
>>ひみつ
いろいろ思うところはありますが、結局のところ今やれるのは毅然な対応をどの対戦にでも出すことぐらいな気がします。
特にペナルティの勧告のくだり、世界大会で戦うプレイヤー双方のための対応、為になりますね。
日本でも公式大会では、そういう意識を持ってもらいたいです。
仮にいくらジャッジを教育してと言ったところで、我々が何年もかかって覚えてきたものをあれだけの数のスタッフに教育するってそう簡単ではないと思いますしね……。
そしてkeep things movingは良い言葉ですw実行はなかなかできませんがw
>>なるパパさん
意識の面では、この方はすごくプレイヤー目線でスタッフの仕事をしているんだな、という印象を持ちました。
まあ意識の持ちようで問題がすべて片付くわけではないにせよ、プレイヤー側が求めていることとスタッフ側のやりたいことが違っていては、どこかに問題は起きてきますしね。