【翻訳】獅子の分け前――カエンジシの流行と、優勝者インタビュー
 今回はSixPrizesから。
 アメリカでは先週末にアメリカ選手権(U.S.Nationals)が行われました。ご存知のとおり、ランドロス/ライチュウ/ダストダス/ミュウツーがマスターで優勝して幕を閉じましたが、一方でカエンジシの流行も印象に残ったところです。
 Nationalsに関する記事はこのあといくつか出てくると思いますが、まずは、そのうちのひとつを紹介します。

 今回の内容は、カエンジシを使ったふたつのデッキの紹介と、マスター優勝者インタビュー。そこまで長くないながらも盛りだくさんです。
 記事自体はインタビューの途中で無料部分が終わってしまいますが、前半のデッキとインタビューだけでも、読む価値はじゅうぶんにあると思います。
 練り込まれたふたつのカエンジシ、ぜひ見比べてみてください。

 いつもどおり、訳語の至らなさや誤訳の責任は、すべて僕うきにんに属します。
 読みやすさを考慮して、訳文の省略や改行の変更があります。
(今回も例によって無許可翻訳なので、何かあればすぐに削除します)

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

“The Lion’s Share” -- Pyroar’s Popularity, Interview with Brandon Salazar, the Clock, and Last-Chance Regionals
by Mike Diaz
Wednesday, July 9, 2014
ttp://www.sixprizes.com/2014/07/09/the-lions-share-pyroars-popularity-interview-with-brandon-salazar-the-clock-and-last-chance-regionals/


 やあみんな。早速だけど本題に入ろうか。話すことがいっぱいあるから、まとめて書けてうれしいよ。

 今年のアメリカ選手権の上位卓は、なかなか新鮮な驚きだった。まずカエンジシの存在感がヤバかった。どいつもこいつもカエンジシだ。いつものリザードンや鍛冶屋と組むやつもいれば、キュウコンやミュウツーみたいな意外な連中と組ませたやつもいた。とにかく今週末、カエンジシは、疑うことを知らない対戦相手の夢を数多く踏み潰していった。

 もうひとつの意外なデッキといえば、舞台を独り占めしていたランドロス/ダストダス/ライチュウ/ミュウツーだ。もちろんこれは、先を見通していた連中なら頭の片隅に入れておかなくちゃいけないデッキだ。このたぐいのデッキはメインイベントのスイスラウンド中にいくつか見かけたし、そのうちのひとつと対戦する機会もあった。――このデッキはガチだ。運良く、マスターの新チャンプBrandon Salazarに、あのユニークなデッキについてインタビューができた。この若き優勝者のことは、記事の後半で知ってもらおう。

 デッキとは別に、今年のアメリカ選手権では、いくつか面白い変化もあった。会場ホールの中心には時計があって、対戦中にみんな見ることができたが、それについての会話があちこちで聞こえた。あの時計の良い点と改善点について、俺の意見も書くつもりでいる。

 それから、今週末にある2つのlast-chance Regionals (Championship Point Challenges)では、俺も含め、かなりの人数が500チャンピオンシップポイント圏内に入るだろう。今週末みんなが経験しそうな、やるかやられるかの心の準備についても書こうと思う。あとは、プレイヤーキャップ(帽子)と、入場時にもらえる会場限定プレイマットの問題点についても書きたいと思っている。

■カエンジシ

 何はともあれ、カエンジシだ。

 俺が覚えているかぎり、Michael Pramawatはずっとポケカ界の重要人物だった。今週末も、その底力を見せてくれた。Pramは純正のカエンジシで決勝までたどり着いた。公式に載った彼のデッキはこんな感じだ。

4 シシコ
4 カエンジシ
1 ミュウツーEX
1 リザードンEX

4 アララギ博士
2 N
3 鍛冶屋
2 フラダリ
4 ローラースケート
3 じてんしゃ

4 ハイパーボール
2 レベルボール
4 ポケモンいれかえ
4 ポケモンキャッチャー
3 ちからのハチマキ
1 パソコン通信
2 トロピカルビーチ

8 炎
4 ダブル無色エネルギー

 デッキの動きを理解するのは難しくない。カエンジシを立てて、こいつにダメージを当てられる連中を倒し、あとは勝利まで一直線、ってわけだ。カエンジシの強さとか、Pramが結果を残せた理由とかをあれこれ書くつもりはない。表面的に見れば、そんなのを理解するのは簡単だ。ただし、いくつかのカードが使われている理由と、900人規模の大会でなぜ彼のデッキが一番結果を残したカエンジシになったのかは、説明してみたい。

・カエンジシ4-4、ミュウツー1、リザードン1

 デッキはシンプルだ。Pramはカエンジシだけをデッキの根幹に据えた。カエンジシが4-4で入っていれば、相手はゲームに勝とうとすれば最大数のカエンジシを突破する羽目になる。カエンジシが1体なら、毒やダストオキシンで倒すのはそこまで難しくはない。ただ、4体を倒すのはとんでもなく難しい。しかもPramは……

・ポケモンいれかえ4、キャッチャー4、フラダリ2

 今年のアメリカ選手権でイベルダストを使った人間として言わせてもらえば、Pramのデッキと当たるのは怖すぎる。いれかえが4枚入っていると、ヤミラミとどくさいみんで30ダメージを乗せてもすぐに回復される。ヤミラミがハエみたいにバシバシ落とされる中だと、このダメージじゃ全然足りない。

 どくさいみんの怖さがなくなったなら、イベルダストとのマッチアップでは、あとはダストだけを警戒すればいい。Pramはどうしたか? ダストをバトル場に引っ張り出すカードを6枚デッキに入れた。最大限のカエンジシラインに、毒とダストへの解答のおかげで、Pramは実質的に、誰もが最強デッキだと思っていたはずのイベルダストには、ほぼ勝ち確定の状態だった。

 どくさいみんへの軽めの解答は、もうひとつ、トロピカルビーチがある。ビーチで明確なドローのアドバンテージが得られる一方で、タチワキを場から吹き飛ばすこともできる。もしいれかえを使い切っても、毒のダメージが30から10になれば、他にダメージを受けないHP110にとっては何でもない。

・ローラースケート4

 Pramのデッキで最後に話題にしたいのは、ローラースケートだ。このデッキの最大の特徴のひとつが、このカードだと思う。Pramの認識では、このデッキには、場の組み立てのときにはあまりうれしくないサポーターが入っている。鍛冶屋とフラダリは両方とも抜群に強いカードだが、デッキを回すことはできない。このデッキにはドロー能力が必要だった。Pramはどうしたか? 非サポーターのドローエンジンをデッキに投入したのだ。

 ゲーム後半では、サポーターを使う機会はだいたいフラダリか鍛冶屋だろうが、ときおりローラースケートで表が出れば手札を新しく引くことができる。追加の非サポータードローエンジンとして、じてんしゃも3枚入っている。ここの部分は小さくてもすばらしいアイディアだと思うし、準優勝する上では十分に意味があったはずだ。

・キュウコン派生

 カエンジシを他の相方と組み合わせたのもいれば、別の道を行った連中もいた。その中でも、Justin Sanchez、Sam Liggett、Dave Richardは、リザードンとミュウツーに加えて、キュウコンを入れたカエンジシデッキを使うことにしていた。キュウコンは、Pram型のデッキがフラダリとキャッチャーでやっていたのと同じことが複数回できる。それだけじゃなく、アタッカーにもなれる。低コストで、殴りたいものが殴れて、毒タチワキとハチマキがあると、異常なダメージ量にもなる。

 アメリカ選手権前日にDave Richardと何マッチかやってみたところ、2回も0-2で負けてしまった。個人的には、このデッキはどちらの型で使っても強い。どんな型でも世界大会に向けてこのデッキの対策をしておけば、見返りはあるはずだ。

 以下はRyan Sabelhausのリストだ。彼はRichard家と、もちろん愛すべき兄弟のKyleとも何度も調整をした。2011年のアメリカチャンピオン、Justin Sanchezも強調していたとおり、本大会ではDaveだけしか使わなかったものの、このリストは、彼らが最後にたどり着いた形だ。

4 ロコン
4 キュウコン
3 シシコ
3 カエンジシ
1 リザードンEX
1 タブンネ

3 アララギ博士
4 N
2 アクロマ
3 フウロ
2 鍛冶屋
1 フラダリ

3 ハイパーボール
3 レベルボール
4 どくさいみん光線
2 ちからのハチマキ
1 すごいつりざお
1 びっくりメガホン
1 ダウジングマシン
3 トロピカルビーチ

7 炎
4 ダブル無色エネルギー

■Brandon Salazarインタビュー

 ここからは、2014年アメリカ選手権マスター優勝者、Brandon Salazarへのインタビューをお届けしたい。個人的に、今回のインタビューは、これまでSixPrizes向けにやったものの中でも、相当に深く考えられてて、ためになるものだ。読んでもらえてうれしく思う。Brandonはわずか15歳にして、このデッキとポケカについて信じられないほどよく理解していて、この上ないほど将来有望だ。ぜひ彼のことを知ってほしい。まずは優勝デッキからだ。

3 ランドロスEX
2 ミュウツーEX
2 ヤブクロン
2 ダストダス
2 ピカチュウ
2 ライチュウ
1 クリムガン

4 アララギ博士
3 N
3 フウロ
2 フラダリ
1 サナ
2 じてんしゃ

3 ハイパーボール
1 レベルボール
2 ポケモンいれかえ
2 かるいし
3 ちからのハチマキ
1 改造ハンマー
1 はかせのてがみ
1 パソコン通信
4 どくさいみん光線
2 タチワキシティジム

7 闘エネルギー
4 ダブル無色エネルギー

 ではインタビューに入ろう。

――まず、歳はいくつで、どのくらいポケカをやっていますか? 調整相手は誰で、彼らは今回、何を使いましたか?

 15歳で、2010年からポケカをしています。調整相手はJustin Kulas、Justin Boughter、Luke Kirkham(ttp://victory-road.co/にブログがあります)ですが、フロリダで対戦できる相手なら基本的に誰でもです。調整相手はそんなにたくさんいませんでした。友だちのJustin Kulas(シニア)はカエンジシを使って4-4-1で終わり、別の友だちのJustin Boughter(シニア)はTDKで9-3-2というかなり良い成績でした〔※訳注:TDKはキュレム型プラズマのこと〕。Lukeは実はイギリスの人で、僕とまったく同じデッキでイギリスのトップ16に入りました(ttp://victory-road.co/2014/05/28/a-nationals-near-miss/) 。

――他の人があなたのようなデッキをあまり使わないのは気になりましたか? そもそも、なぜこのような、あまり例のない、型破りなデッキを作ろうと思ったのですか?

 まったく気にならなかったです。僕の使ったようなタイプのデッキを使っていた人たちは、たぶん下の方に落ちていったと思います。あまり使われないデッキで結果が残せて、すごくうれしいです。そもそもこのデッキを使った理由は、使っていて楽しかったからです。引きがひどいときでも、このデッキなら相手にプレッシャーをかけられます。それに、みんなカエンジシが強いと言っていますが、このデッキとならこちらに分があります。ランドロスは僕がすごく好きなカードです。ハンマーヘッドはナイトスピアっぽいですし、世界中みんなに、ランドロスはまだまだ使えるカードだと言ってみたいです。
 闘タイプは、ミルタンク、ライチュウ、アブソル、ゾロアークとかのめんどうなカードも倒せます。

――このデッキはどのくらい調整しましたか? そのあいだ、他のデッキは調整しましたか? もしそうなら、他の選択肢でなくランドロス入りデッキを使ったのはなぜですか?

 このデッキは一ヶ月半くらい調整しました。相手はだいたいイベルタルとビリゲノでした。他に使おうと考えていたのはビリゲノとTDKでしたが、どちらも対カエンジシがつらいとわかりました。他の2つでなくランドロスデッキに決めたのは、カエンジシが流行ることがわかっていて、このデッキならそれに有利だったからです。カエンジシがTDKとビリゲノを処理してくれることを祈っていました。そうすれば、イベルタルやカエンジシみたいな有利な相手に当たれるからです。そして2日目に当たった相手は、だいたいイベルタル派生とカエンジシでした。

 ――TDKとビリゲノは厳しい相手ということですか? カエンジシが一番相性の良い相手だと言いましたが、一番相性の悪い相手は何ですか?

 はい、TDKにはほとんど勝てません。メインアタッカーのランドロスには、水デッキは最悪です。スイスラウンドでTDKを一度倒せたのは運がよかったですが、そのときは相手がアクロママシーンを何発か打っただけで事故ってくれました。対ビリゲノは、レッドシグナルでヤブクロンが倒されるとどくさいみんを使えなくなるので、よくわからないゲームになります。ビリゲノを倒すには、先攻を取って2ターン目にダストダスを立てることです。初日の唯一の負けは、1ラウンド目のビリゲノとの対戦でした。
 エンペルト、TDK、カメックスのような水デッキが一番つらい相手です。対アギルダーフライゴンも、厳しい戦いになるはずです。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 これ以降は有料記事のため、翻訳は以上になります。お読みいただきありがとうございました。

 毎年毎年、アメリカ選手権は、対策の対策みたいな予想外のデッキが上位に来る傾向があります。今回も、マスターの決勝中継に映っていたのは、イベルやビリゲノといった本命ではなく、カエンジシとランドロスでした(ただし、優勝者も言っているとおり、カエンジシの流行自体は予想の範疇だったようですね。このあたりは現地と外部との情報の差を感じます)。
 それでも結果がどうあれ、今回の記事の3つのデッキは、どれも優秀なデッキに違いはないはずです。カエンジシキュウコンだけは公式にも載っていませんが、プレイヤー名からも推察されるように、相当入念に作られているのは確かでしょう。

 次回はまったく違ったデッキの記事を紹介予定。この環境、実はいろんなデッキの余地があるんですね。
(それにしても、ひたすらにビーチは強いですが……)

コメント

プランナー
2014年7月11日21:33

毎回興味深い記事をありがとうございます。

カエンジシの隆盛は想定内のものだったのですね。
逆に、日本ではカエンジシが全く流行らなかったのが面白いですね。
カエンジシ対策を完全に切っていたデッキも多そうでした。

ランドダストライチュウは日本でも結果を出していたデッキだと思いますが、向こうには日本のメタ情報はどれくらい流れているのでしょうね。

うきにん
2014年7月12日20:16

>>プランナーさん
お読みいただきありがとうございます。
日本では、ひきさくレックがビール派生で使われていたことと、何より、公式が負けたら終わりという大会形式なのが一番大きな理由だと思います。
カエンジシはけっこう有利不利のあるデッキなので、日本の公式のような、負けたら事実上終了の大会形式では、敬遠された部分が大きいのかな、と思います。
ランドダストライチュウは、選択理由はおそらく違えど、日本でも使われていましたね。日本の情報は、おそらく海外のトッププレイヤーたちはほぼ知っているだろうと思います。

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