今回はSixPrizesから。今年の世界大会でレックビールを使ってトップ8入賞を果たした、Jon Bristowによる記事です。
 元記事は会員限定記事になっていますが、無料で読める前半部分だけでも大変面白い内容です。そのため、その箇所のみの部分訳となっているのですが、かなりの充実した分量があります。
 この記事内では、メタゲームをどう読むかという問題を、とても実践的に考察しています。書いている内容を体現するかのように、他記事やレポートへのリンクも豊富にあり、非常に読み応えのある記事になっています。12日の記事ですが、バトフェス東京までに訳せてよかったと思います。
 後半にはデッキの話も多くあるので、小難しい理屈はいいからデッキの話を読ませろという人は、序盤を飛ばして中盤から読むと良いでしょう。

 記事中には、アメリカの大会形式の名称がたくさん出てきます。日本には該当する形式がなかなかないので原語をそのまま用いてありますが、読んでいるうちになんとなくの規模はわかると思います。

 いつもどおり、訳語の至らなさや誤訳の責任は、すべて僕うきにんに属します。
 読みやすさを考慮して、字体や改行を変更した部分があります。
(今回も例によって無許可翻訳なので、何かあればすぐに削除します)

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“Can’t Beat’Em All” -- Finding Your Way in a Diverse Metagame
by Jon Bristow
Thursday, December 12, 2013
ttp://www.sixprizes.com/2013/12/12/cant-beat-em-all-finding-your-way-in-a-diverse-metagame/


 今日は、とある重要な考え方について話そうと思います。現環境のメタ読みについてです〔※訳注:原文ではmetagameを動詞で用いて表されていますが、メタ読みという訳語をあてました〕。フォーマットが変わる以上は毎シーズン話題になることではありますが、今回は、個々人自身でできるようなやり方を紹介したいと思います。

 また、議論を始める前に、キャッチャーが効果的に弱体化されてから、ものごとがどのように展開していったのか、それについての雑感を少し書きたいと思います。記事の終わりにかけては、CitiesやRegionalsに向けてデッキをいくつか取り上げて解説し、メタ読みという考え方においてはそれらがどう機能するのかを説明したいと思います。

 記事の最後には、読者の人たちが、地域のローカルプレイヤーよりも上を行って勝てるようなあれこれを全て書き残すことができたらと思っています。

■現環境おぼえがき

 ようやく環境が次に進めるだけの時間が過ぎました。League Challengeが数多く開かれ、そして今はCity Championshipsの真っ最中です。そういうイベントの中には、対戦動画をオンラインで公開しているものもあります。残念ながら自分はもうすぐ大学の学期末なので、勉強のせいでイベントの多くに出られなかったものの、前回の記事〔※訳注:ttp://www.sixprizes.com/2013/11/14/gotta-go-fast-regionals-recap-and-deck-discussion-heading-into-city-championships/〕を書いてから、環境をいろいろ観察して、NXD-LTR環境〔※訳注:BW3-EBBに該当〕の対戦をかなりやっていました。

 以下、最も気になったことを2つ挙げます。

30分という制限時間がゲームの形を決めている
 
 現環境の30分制のゲームで気になった最大の点は、引き分けが非常に多いということです。1対戦は5分で終わることもあれば、30分続くこともあります。ポケモンをベンチから引っ張り出せるものが限られているため、ゲームは遅くなる一方ですが、個人的には、それは(ある程度までは)良いことだと思います。

 良くない点は、プレイヤー側が動きに時間をかけることで、ルールに反することなくゲームの速度を遅くし、戦況がきついときは不可避的に引き分けに持ち込めてしまうところです。過去記事〔※訳注:ttp://www.sixprizes.com/2013/11/14/gotta-go-fast-regionals-recap-and-deck-discussion-heading-into-city-championships/#a-word〕で、そういう状況に対処する方法について書きましたが、ここではまさにそういう状況になっているわけです。

どんなデッキでも勝つ可能性はある

 国内選手権から世界大会へ、そして秋のRegionalsへ、そして、一番規模の小さなLeague Challengesへと移っていくと、大小のイベントのささいな差など簡単に忘れてしまいます。事実上環境で一番強いはずのデッキでも、不利なマッチアップをいくつか踏んだだけで、予選を抜けることはできなくなります。そのため、大きな大会で勝つ可能性がとても小さなデッキであっても、地域の大会で7連勝してしまう、ということもありえるわけです。

 しかしこれは、こういった大会で最善を尽くすのは賢明ではない、と言いたいわけではありません。ここで言いたいのは、Citiesを単体のイベントと捉えるのではなく、本来のようにひと繋がりのイベントとして捉えた方がいい、ということです。つまり、毎回続けて最善を尽くすことが、成功するのに最も良い方法なのです。

 これらをすべて心に留めた上で、みなさんと最も議論してみたいメイントピックに入っていきたいと思います。メタ読みの技術についてです。

■メタ読みとは何か

 今ではほとんどの人がメタ読みについて聞いたことがあるでしょうが、その基本的な意味は、普通の人にとっては、「ほかのみんなが使っているものへの対策をする」です。おおよそその通りなのですが、しかし本来それは、単に流行りそうなものを対策するということよりも、はるかに奥が深いものです。下記は、Wikipediaにおけるメタ読みの意味です。
メタ読みは意味の幅の広い言葉であり、多くの場合、事前に用意されたルールセットを飛び越えたり、外部の要因を使ってゲーム内に影響を与えたり、あるいは、ゲームによって設定された環境や想定制限を越えてしまうようなゲームにおける、方法、行動、戦略のことを指す。もうひとつの定義は、ゲームそれ自体の外部における、ゲーム展開のことを指す。
わかりやすい言葉でいえば、ゲーム内での他人の選択に影響を与えるために、ゲーム外の情報やリソースを利用すること、です。

 この定義は、ポケモンカードにおいてその語が持っている意味を正確に表していると思います。しかしながら、この定義を読むときは、自分の良心を忘れずにいてください。勝つために外部の情報を利用するといっても、ルールを捻じ曲げたり、破ったりしてはいけないということです。

 さて、ここまではメタ読みとは何かについて話してきました。ここからは、メタ読みとはどうすればいいのかを話していきましょう。

■環境を定義する

 環境を定義するという考え方があれば、自分のデッキについてどのような選択を取るべきかを理解できるようになります。漠然とした言い方ですが、しかし心配はいりません。詳しく説明していこうと思います。まずは、イベントのサイズと、それによって何がわかるのかから始めましょう。

小規模イベント(League Challenges, Cities)

 これら地域性の強いイベントでは、出場しているプレイヤーの大部分を見知っているでしょうし、かれらが何のデッキを使っているかや、どのくらいのレベルの相手と対峙することになるのかもわかっているでしょう。

中規模イベント(States, Regionals)

 これらの大会は、文字通り、ローカル大会の集合体です。しかしながら、出場のために飛行機や車でとんでもない距離を移動してきたプレイヤーがいたとしても、驚くにはあたりません。大会全体を把握しきることは望むべくもありませんが、それでも、さまざまな地域から来ている友人たちから得られるローカル大会の結果や考察は、間違いなく、予想をどうするかへの手助けになります。

大規模イベント(Nationals, Worlds)

 これらには本当にたくさんの地域からプレイヤーが集まるために、地域ごとのメタ読みをするのは不可能になります。それでも、この場合はインターネットが味方になるでしょう。テストプレイでの経験や、他のプレイヤーたちがアクセスしている情報に基づいて、プレイヤーの大多数がどんなデッキを使っているのかを読み取ることもできます。ここには、例えばいま見ているようなウェブサイトやソーシャルメディアも含まれます。

 とはいえ、これで作業が終わったわけではありません。次の記事に一番関係のある最初の2カテゴリについて、特に注意を向けてみたいと思います。

■小規模イベント――日々移り変わる反応を読み解く

 こんな場面を想像してみてください。いまあなたは、調整済みのビリジオン/ゲノセクトデッキを持って地域の大会に出場して、地元のプレイヤーを倒し、当然手に入るはずのチャンピオンシップポイント50点を手に入れようとしています。しかし周囲はミカルゲ(EBB)入りのダークライを使っていたために、対戦したゲームすべてでダークライを一撃で倒すことができず、際どいゲームに敗れて2連敗してしまいます。

 これを見て、あなたは翌日、信頼のおけるランドロス/ミュウツー/ダストダスデッキに切り替えます。もし全員が同じデッキを使ってくるならば、闘ポケモンが暴れまわるのを誰も止められないとわかっているからです。

 しかし、他の全員も同じことを思っています。その日は大量のミラーマッチに遭遇し、また一夜漬けのデッキでは練習が足りず、結局あなたは予選突破を惜しくも逃してしまいます。確かにこれは不運かもしれません。これをツイてない日だと言うこともできます。しかし一方で、ここから学ぶこともできます。メタゲームは、周囲に対応して動くのだと。

 ここからわかるのは、その日使われていたデッキだけでなく、その前日に使われていたものも考慮する必要がある、ということです。周囲の人が、彼らが同様に見ているものに、どう対応しているのかを見極める必要があります。場所によっては、こうならない地域もあります。なかには、65/35で有利を取れるのが明らかなマッチアップや、周囲の全員が使ってくるのと同じようなデッキで優位に立てるようなチャンスをあっさり無視する人もいるからです。こういう場合には、あなたの持つ対策デッキはさらにうまくやれるだろうと自信を持って予想することができます。

 あなたの地域の環境がどのくらいよく動くのかがわかっていれば、この情報を(そして結果を)さらに効率よく用いることができます。これは、スイスラウンド5連勝と1敗2分け途中棄権との差を意味します。周囲の人々を理解することは、大会で勝つためのソーシャルスキルであるだけでなく、日々の生活においても不可欠な能力でしょう。

 これらの情報は厳密には科学的というわけではありません。しかし、今回お話しようとしていた内容を思い出してほしいのですが、ここでの目的は、参加する大会での最良のデッキ選択ができるようになることです。

 ひとつ細かいことを書き足しておきますが、ローカル大会では、ときには大会前にフリー用のテーブルを見るだけで、そこのメタゲーム全体を把握することもできるのです。

■中規模イベント――何が機能するかを知り、安定に徹する

 Regionalに、もしくはStateレベルの大会に参加したときには、自分の地域のメタゲームに加え、他の地域のメタゲームも経験することになります。しかしここでは、小規模ならばそこまで問題にならなかった要素を考慮に入れる必要があります。それは大量のラウンド数と、そして3ゲーム制かつ50分+3ターン制だということです。ということは、外部的な要素、プレイヤー数、そして考えるべきことがたくさんあるのです。しかしきちんと準備をすれば、勝てる見込みはぐっと上がります。

 最初のキーポイントは、自分が経験した結果と、そしてそれと同じくらい、参加してくる可能性のある地域の結果に目を向けることです。友達経由でもいいですし、使えるインターネットリソース経由でもいいでしょう。そうすれば、何が多く使われるのかがわかります。ときには、次の大型大会で結果を残す直前に、その前の週末を特定のデッキが席巻するのを目の当たりにするでしょう。そういったデッキが上がってくるのを目にするのは大事なことですが、実際は大したことのないようなデッキに惑わされてはいけません。プレイヤーとして、プレイテストの価値がわかるのはこのときです。プレイテストをすれば、一般的にはどのデッキがどのデッキに強いのかを理解できるのですから。

 よく使われるデッキのうち、上位にくるのが何なのか、6割から8割ぐらい理解できていれば、それに基づいてデッキを選択するという仕事がのしかかってきます。それぞれのマッチアップの詳細を今ここですべて挙げることはできませんが、しかし、それらに対して安定したデッキを選ぶことの重要性は、強調しておきたいと思います。

 もちろん、デッキを安定させたいというのは常に願っていることです。しかし、3ゲーム制形式の大きなイベントに参加して、デッキが十分に回らず決勝トーナメントに届かなかったとき、とりわけそれが一回きりのイベントであった場合には、落胆してしまうということもあるでしょう。小さなイベントは何度でも行われますが、Regionalsのようなイベントの回数は、それぞれのシーズンで、非常に限られてくるからです。

■大規模イベント――情報に触れるとはどういうことかを理解する

 たとえイベントの規模が大きくなっていっても、行動パターンは上述と同じなのです。地域の組み合わせを考え、大多数のプレイヤーが何を使ってくるのかを見極めます。ここでは手短にしか述べませんが、今年の夏は、それが非常に当てはまっていました。

 お気に入りのソーシャルメディアサイトやポケモン関係のホームページにログオンすれば、そこには大きなイベントの結果が掲載されています。たとえばこのウェブサイトのような、デッキや戦術について議論するようなウェブサイトを見てみれば、それぞれの記事を読むだけでなく、そこから一歩引いて、より重要なことに気づくこともできます。つまり、あなたが見ているものは、他の全員も見ているということです。情報に触れることで他のプレイヤーはデッキ選択ができますが、あなたは、さまざまなウェブサイトを巡ることで、大きなイベントでは何が流行るのか、何が「イチオシ」のデッキになっているのかを知ることができます。

 昨年度〔※訳注:2012-2013シーズン、つまり今年の世界大会までのこと〕、アメリカ選手権の前には、デオキボルトキュレムこそが倒すべきデッキとなっていましたが、一方ゴチルゼル/アギルダーの参入によって、まさに混沌の様相を呈していました。ゴチルゼルは、対策を取っていないデッキには容易に勝つことができたからです。しかし時間が経つにつれ、よく使われていたデッキのうち、カメックスやダークライなどは、カードを足すことで、この脅威のモンスターデッキを倒すことができるのだと人々が気づき始めました。またプラズマにとっては1キルがゴチルゼルを倒す手段であること、その一方でゲームが長引いてしまうと、プラズマにとっては不利なマッチアップであることもわかってきました。〔※訳注:ここまでが選手権前の話です〕

 そういうわけでゴチルゼルは数を減らしていったのですが、それでもアメリカ選手権では多くの成果を挙げました。すべての情報が解析されていたために見限られていても、ゴチルゼルはポテンシャルがあるのだと、ごく一部の優秀なプレイヤーたちが気づいていたのです。そうして、Edmund Kurasにアメリカチャンピオンの座を、またSam Liggett〔※訳注:ttp://www.sixprizes.com/2013/07/19/magic-in-the-room-sams-3rd-place-us-nationals-report-with-gothitelleaccelgor/〕にベスト4の座をもたらし、Frank DiazやHenry Priorといったプレイヤーたちにも、上位入賞をもたらしたのです。

 もしあなたが参加しようとしているRegionalsが、ここに書いたイベントと同様の大きな規模になりそうならば、このセクションに書かれている内容も役に立つかもしれません。たいていNationalsはメタがあまり流動的ではありませんが、Worldsのメタが流動的かどうかは、その年によってばらつきがあるということも、知っておいて損はないでしょう。

■メタ読みの成功例

ケーススタディ:自分の世界大会経験

 昨年度〔※訳注:上に同じ〕、世界大会に参加したときに持ち込んだのは、何ヶ月間も調整していたレックウザEX/シビビールでした。それで8位に入賞したのですが〔※訳注:ttp://60cards.net/blog/posts/detail/13〕、そこで問題にすべきは、2日目の終わりにどんな順位にいたかではなく、初日の最初にデッキリストを提出したとき、勝つチャンスがどのくらいあったのか、ということなのです。

 レックビールを使うことにした理論的な根拠は単純なものでした。
 アメリカ選手権という世界で一番大きなイベントで、ゴチルゼルが優勝しました。これが意味していたのは、ゴチルゼルには、16ラウンド以上もあるトーナメントのメタゲームで安定してやりあうだけの能力がある、ということでした。

 予想していた変化は複雑なものです。多くのプレイヤーが、ゴチルゼルを使うか、あるいはそれに勝てるものを使うだろうと思いました。そこには、カメックスや、ダークライや、ルギア/タブンネも含まれます。レックビールは、そういったデッキたちに勝つにはうってつけのデッキだと感じていました。しかもライコウEXのおかげで、このデッキは対ゴチルゼルのマッチアップを有利にできるようなメカニズムまで内蔵していたのです。

 ここでのキーポイントは、デオキボルトキュレムはかつてほどの大きな流行はまったくしないだろうと予想していたことです。というのも、上で挙げたようなデッキは、デオキボルトキュレムに対し、五分か、それ以上に戦えたからです。結果として、この戦略が功を奏しました。オポが驚くほど高かったおかげで予選を31位で滑り込み、しかし準々決勝では、5分5分ではあるものの自信のあったマッチアップで敗れてしまいました。デオキボルトキュレムとは2度あたりましたが、1勝1敗でした。

 しかしながら、同じく世界大会でレックビールを使った4人のチームメイトたちは、ここまでの運には恵まれず、予選を突破できませんでした。そのうち2人は早い段階でデオキボルトキュレムを踏んでしまって、下位卓へと押しやられてしまいました。デオキボルトキュレムがわんさかいる場所に、です。言うまでもないですが、あまり良い気分はしませんね。

 果たして、自分の選択の何が正しかったんでしょうか。個人的には、イチかバチかの戦略にはなりますが良いデッキを選んだと思っています。結局、もし本当に勝つ見込みが薄かったならば、世界大会で予選を抜けるのが自分にふさわしいとは思えなかったでしょう。メタゲームに対するゴチルゼルの影響を正しく見極めることができた、というのが、ここまでうまくやれた唯一の理由なのだと思います。

 しかし、自分たちのチーム内の思考ロジックに大きな欠陥があるとすれば、それはゴチルゼルが多く使われると予想していたことです。端的に言って、Nationalsの結果をきちんと読み解けていなかったのです。ダークライの使用や、カメックスデッキのカメール投入を大勢のプレイヤーが推奨しているのを見れば、よっぽど思い入れでもない限り、まともな思考をするプレイヤーはゴチルゼルを使ってこないだろうと予想できてしかるべきでした。

 なかにはここまで推測できていたプレイヤーもいて、ギギギアルが思いのほか多く使われ、それに値する結果もいくつか残していました。とはいえ、今回自分が良い結果を残せたのはとりあえず運が良かったからだとしても、勝つ見込みがなかったということにはならないのです。

 しかし、自分のことはこのくらいにしておきましょう。昨年度は、他にも多くのプレイヤーがすばらしいメタ読みの結果を披露してくれました。ここでは、そのうちのいくつかを振り返ってみたいと思います。

■2013年の注目すべきメタ読みデッキたち

・Winter Regionals

Dylan Bryan(ダークライEX/ダストダス/ハンマー)

 かるいしが世に出る前だったにもかかわらず、DylanはこのデッキをVirginia Regionalsに持ち込み、2位までこぎつけました。かれはたいていの相手のデッキ(レックビールやカメックス)がとくせいに依存していることに目をつけ、そしてBig Basics系〔※訳注:ランドロスEXやミュウツーEXなどの高HP高打点のたねを中心としたデッキ〕のデッキに対しても、クラッシュハンマーとゴールドポーションで勝てるようにしていました。かれの試合をトップ8から決勝まで見ていたのですが、かれと戦った2進化デッキの多くは、接戦にさえ持ち込めていませんでした。

 決勝でかれの前に立ちふさがったのは、われらがRaymond Cipoletti〔※訳注:ttp://www.sixprizes.com/2013/02/12/another-pun-about-storms/#virginia-regionals-recap〕でしたが、しかしかれは、デッキから引き出せるかぎりのものを引き出していたと思います。

・Spring Regionals

Dylan Lefavour(Big Basics+Ⅴジェネビクティニ&炎エネ1枚)

 DylanはNew England Regionalsで、初日を無敗で駆け抜け、そのまま優勝を成し遂げました。かれはカメックスがそこまで流行らないことをわかっていたため、Big Basicsがカメックスに勝つのに必要なカード、たとえば学習装置などを数多く抜き、ギギギアルに勝てるようなギミックを加えました。自分がかれと当たる数ラウンド前、かれがビクティニを置き、ちょうど自分のと同じようなギギギアルデッキを倒すところを目の当たりにしました。理想的な試合運びとはいかず、スイスラウンドではあの罠を避けられずにかれに敗北し、またトップ8の試合でも、0-2でかれに再び敗れてしまいました。

 ここでのかれはメタゲームを完璧に読んでいました。デッキの最大の欠点を補いつつ、相性の悪いデッキが会場にはいないことを予想しきっていたのです。

・Worlds

Dustin Zimmerman(ヤミラミ/ダストダス/ハンマー)

 この振り返りの上のほうでも書いたとおり、会場にはまずいないであろうデッキを正しく予想することができれば、結果はたいてい良いものになります。Dustinの世界大会でのパフォーマンスは、まさにこの典型例でしょう〔※訳注:ttp://www.sixprizes.com/2013/10/29/why-didnt-i-think-of-that-the-decks-and-techs-of-fall-regionals-2013/#dustin〕。かれは1枚挿しのニューラ(BW3)を除けばゴチルゼルを倒せるカードはほぼ入れずに世界大会に参加しましたが、自分に有利なメタゲームのおかげで、相性の良い相手と大量に戦うことができました。

 いざ世界大会が始まってみると、そこにいたのは、カメックス、ルギア/タブンネ、ギギギアル、そしてダークライでした。ということは、現実的にかれが当たりうる相性の悪い唯一のマッチアップは、ときどきいるダークライだけであり、トップ4に至るまで、かれはそれには当たらなかったのです。

・Fall Regionals

Brandon Smiley(ビクティニEX/テラキオンEX/フワライド)

 このRegionalsシーズンの「ビッグ4」〔※訳注:ダークライ、プラズマ、カメックス、ビリゲノを指す〕と、そしてBrandonのデッキの内容〔※訳注:ttp://www.sixprizes.com/2013/10/30/the-story-of-big-tex-brandons-1st-place-houston-regionals-2013-report/〕とを見比べてみれば、かれが、どのデッキが少ないと予想していたのかがわかるはずです。かれの選択の背後にある戦略は、悲惨なほど相性の悪いはずのカメックスを切り捨てる代わりに、ビリジオン派生、ダークライ、そしてプラズマにはほぼ間違いなく勝てるようにするというものでした。

 そして、それはうまくいきました。その週末のかれは最初のほうのラウンドでうまくカメックスと当たらずに済み、デッキ相性のおかげで相手を倒していったのです。

Sam Chen(スクラッパーなしカメックス)

 Samはフィラデルフィアで、ダークダストやダスト派生があまり使われていないという現実をあてにして、思い切った判断をしました。ある程度までそれは正しかったのです〔※訳注:ttp://www.sixprizes.com/2013/10/29/why-didnt-i-think-of-that-the-decks-and-techs-of-fall-regionals-2013/#blastoise〕。スクラッパーを切ったことでできた2、3枚のスペースは、そのイベントでの17ラウンドを戦えるだけの安定性をかれのデッキに与えてくれました。

 そのイベントでは、ダスト系のデッキはそこそこいたのですが、Samは上手い具合にそれらに当たらずに済んだだけでなく、当たったときは、2度とも勝ってさえいるのです。

Dustin Zimmerman(ビリジオンEX/ミュウツーEX/しんかのきせき)

 DustinはFt. Wayne Regionalsで予選をトップ通過し、4位に入賞しました。世界大会でのパフォーマンスを見ていれば、かれがまたもやメタゲームをうまく読みきったというのも驚くにあたらないでしょう。

 今回のかれは、上で見たBrandonのデッキのようなメタ内への対策デッキを除けば、よく使われるデッキすべてに相性の良いデッキを見出しました。しんかのきせきによってミュウツーやデオキシスの殴り合いに強くなっている一方で、ダークライからはまず2発では倒されないため、相手の速度を抑えることができています。

 下の動画を見れば、1ゲーム目ではもの凄い巻き返しを、そして2ゲーム目では圧倒的な勝利を見ることができます。ゲームを通じてしんかのきせきの力が際立っていますが、これ以上はネタばれをしないでおきましょう。

ttp://youtu.be/YvrH37KOM6I

 メタゲームを読み解く上でのキーポイントは、どのように情報を入手するのかだけでなく、その情報をいかにして正しく解釈するかにあります。ただ改めて言っておきたいのですが、メタ読みは厳密な科学ではありませんし、勝利を保証してくれるわけでもありません。というよりも、勝てる見込みを高くしてくれるものなのです。

 ここで述べることのできる一番のアドバイスは、どのデッキが使われるかだけでなく、どのデッキが使われないのかも理解すべきだ、ということです。そして、それに従ってデッキとその内容を決めていきましょう。自分の地域での正しい戦略を見出すことができれば、ローカル大会(League ChallengeやCities)だけで、今年度の世界大会招待に必要なポイントの半分、つまり290チャンピオンズシップポイントを稼ぐこともできるのですから。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 以上になります。お読みいただきありがとうございました。
 ここより後ろは会員限定記事になっていて、途中で切れてしまうため、訳はここまでとしました。

 元記事の単語に貼られているリンク先URLをすべて訳注の中に押し込んだので、記事が読みにくくなっていることを申し訳なく思います。
 それでも、このように他記事や他レポートを縦横無尽に引用するスタイルは、日本のポケカブログなどの記事ではまず見られないので、非常に新鮮に映りますね。
 下のほうにある対戦動画も、元記事では直接動画を埋め込んであるので、読みながら見ることができます。
 日本でやるとまず心無い叩きが飛んできそうでなかなかできないですが、カードの対戦動画を公開する風潮も、やはり羨ましいですね。

コメント

楓
2013年12月18日20:32

んーーーーー読み応えありました!
いつも素晴らしい記事の引用から、素晴らしい翻訳までありがとうございます。
僕自身まだ公式大会出場自体無いのですが、こんなレベルで日々、デッキ創作や、環境の研究がしたいですねー♪( ´▽`)

うきにん
2013年12月18日23:06

>>楓さん
お読みいただきありがとうございます。
このレベルでプレイしていることに加え、このレベルの記事が定期的に出てくるのが海外ポケカのすごいところです。
モチベーションが高いときにやるポケカは本当に楽しいので、できる限りモチベーションを維持していきたいですね。

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