今回は、topcutとsixprizesから、同じテーマについての2つの記事をまとめて紹介しようと思います。そのテーマとは、海外の2013-2014シーズン、つまり今シーズンのルール変更について。
 海外では現在、ルール変更により、すべてのスイスラウンドが50分3本勝負になっています。加えてスイスラウンドでは、時間切れの際にサイド数が関係なくなりました(トーナメントでは従来どおりサイド数で決めます)。
 その是非についてはルール発表直後からさまざまに言われてきました。
 これまでの30分1本勝負から50分3本勝負への一律変更はどのような影響があるのか、そしてそれについて、海外ではどのように言われているのか。今回紹介するのはそのような記事です。
 これは海外のルール変更ですが、日本とまったく無関係というわけではありません。すべてのスイスラウンドが変更されるということは、当然WCSもこの変更を受けるはずだからです。
 WCS参加予定の方々は、知っておいた方が良い内容かもしれません。

 今回紹介するふたつの翻訳は、それぞれリンク元の記事の部分訳になります。元記事のうち、スイスラウンドのルール変更に関する部分のみを抜き出して訳しました。

 まずひとつめは、topcutの名物ライター、Kyle Sucevichによる記事です。
 キャッチャーや先攻ルールについても書いてある記事なのですが、スイスラウンドの変更についての部分のみを訳しました。
 以下、ゲームとマッチという言葉が出てきます。聞き慣れない人もいるかもしれませんが、3本制の場合は3ゲームでひとつのマッチとして数えます。2ゲーム取ったほうが、そのマッチ(試合)の勝者となります。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「最近のルール変更について――良い点、悪い点、いやな点」(部分訳)

Recent Rule Changes -- Good, Bad, and Ugly
by Kyle Sucevich
Tuesday, October 8, 2013
ttp://thetopcut.net/2013/10/08/recent-rule-changes-good-bad-and-ugly/


 次のシーズンでは、州大会、地区大会、国別大会、そして世界大会のスイスラウンドは、すべて3ゲーム制、50分+3ターンになる。これまでは1ゲーム制の30分+3ターンだった。トーナメントと違い、スイスラウンドでは引き分けが起こる。以下が状況ごとの対処方法だ。
〔※訳注:元記事では引用元が明記されていませんが、以下は"2014 Play! Pokemon TCG Rules and Formats"からの部分引用。ttp://support.pokemon.com/にあります〕
1ゲーム目
・もしも最終ターンが1ゲーム目のあいだに終了した場合、そのマッチは引き分けになる。〔※訳注:最終ターンが云々というのは、そのゲームの途中で時間切れになったらという意味です〕
・1ゲーム目終了後に時間切れコールが行われたもののサドンデスゲームの先手後手が決まっていない場合、そのマッチは引き分けになる。〔※訳注:筆者Kyle Sucevichも別のエントリの中で言っていたのですが、サドンデス云々は同時きぜつでしか起こらないので、非常にレアケースだろうということです〕
・1ゲーム目の勝者が決定したあとに時間切れコールが行われたものの2ゲーム目の先手後手がまだ決まっていない場合、1ゲーム目の勝者がマッチの勝者になる。

2ゲーム目
・もしも最終ターンが2ゲーム目のあいだに終了した場合、1ゲーム目の勝者がマッチの勝者になる。
・2ゲーム目終了後に時間切れコールが行われたもののサドンデスゲームの先手後手が決まっていない場合、1ゲーム目の勝者がマッチの勝者になる。
・2ゲーム目の勝者が決定したあとに時間切れコールが行われたものの3ゲーム目の先手後手がまだ決まっていない場合、そのマッチは引き分けになる。

3ゲーム目
・もしも最終ターンが3ゲーム目のあいだに終了した場合、そのマッチは引き分けになる。
・3ゲーム目終了後に時間切れコールが行われたもののサドンデスゲームの先手後手が決まっていない場合、そのマッチは引き分けになる。

 わかりやすく言えば、3ゲームすべて終了しているときまたは1ゲームのみ終了しているとき以外、そのマッチは引き分けになる。もしも1ゲーム目か3ゲーム目において(時間切れ後の)エクストラ3ターン目が終了しても勝者が決まらない場合、そのマッチは引き分けになる。同様の状況が2ゲーム目に起こった場合、1ゲーム目の勝者がそのマッチの勝者になる。トーナメントでは片方のプレイヤーが4枚以上のサイドを取れば試合成立と見なすので、このルールとは異なる。スイスラウンドでは、ゲームが終了していようとしてなかろうと、サイド数では勝敗は決まらない。

良い点:1キルされても影響は少なくなる。そのラウンド自体が負けになってしまう代わりに、まだ2ゲーム勝つチャンスも引き分けを狙うチャンスもある。カードを引く前に負けるのは誰でも御免だ。少なくとも、1ゲームはきちんとプレイできるというわけだ。総じて3ゲーム制は、プレイヤーに多くのゲームをプレイするチャンスを与え、運要素や成績のばらつきを減らしてくれる。

悪い点:引き分けが簡単に起きる。ポケカで3ゲーム行うのは長い時間がかかるため、3ゲーム目に入ってしまったら、だいたいは引き分けに終わる。プレイヤーは勝ち負けを決めるのに慣れている。引き分けはいろいろと面倒になる。しかも引き分けを設けると、多くの人は好きではないが、インテンショナルドローが必然的に副産物として出てきてしまう〔※訳注:インテンショナルドローは、双方のプレイヤーが合意の上で試合を引き分けにすること。負けたら困る試合などの成績の調整に使われる〕。

いやな点:50分では3ゲームをこなすのに全然足りない。そのため、時間調整をうまくやるのが、プレイ自体をうまくやるのと同じくらい重要になってしまう。制限時間が短いせいで、焦ったプレイ、遅延行為、そして不満足な成績が増加するだろう。もともとストレスの多い環境で、さらにプレイヤーにストレスをかけることになってしまう。多くのマッチが引き分けで終わってしまうということは、勝てば3点もらえる代わりに、両プレイヤーに罰として1点ずつしか与えないということだ。何よりも、トーナメントと違うというのは混乱のもとだ。トーナメントでは片方のプレイヤーがサイドを4枚以上取ればゲームが成立したと見なされるのだから。この方式では勝者を決めるのに苦労することになるだろう。おそらくは、50分3ゲーム制にするよりも、30分1ゲーム制を維持して、ラウンドを追加するなら時間を多く取るのが良い選択肢だと思う。

全体の印象――好ましくない:不十分な制限時間の下では、3ゲーム制はこちらを待ち構える災害のようなものだ。きちんとプレイできる時間が取れないのなら、1ゲーム制の方がマシだ。「安っぽい」勝ちの影響を減らしたいなら、単純にスイスラウンドを増やせばいい。初見の印象では、今シーズンは引き分けが増えそうだ。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 以上になります。
 続いてふたつめの記事は、sixprizesから、常連ライターの一人であるErik Nanceの記事です。
 記事自体は有料会員記事なのですが、ルール変更についての部分は会員じゃなくても読むことができます。今回は、その部分の翻訳になります。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「『眠る必要なんてあるか?』――意見の書き散らしとトーナメントレポート」(部分訳)

“Who Needs Sleep?” -- Random Retorts and a Tournament Report!
by Erik Nance
Friday, November 1, 2013
ttp://www.sixprizes.com/2013/11/01/who-needs-sleep-random-retorts-and-a-tournament-report/


 今シーズンに入るにあたって、僕は多少の予測を立てていた。だいたいは、1ゲーム目の勝利が重要視されるということについてだ。この時間制限のやり方(そして時間切れゲームではサイド数が関係しない)の下では、1ゲーム目に負けてしまったら、2ゲーム目を取るために超高速でプレイする必要が出てくる。時間が切迫すると致命的なミスも出かねないし、そうなればそのまま試合自体に負けてしまう。

 実際この新方式は、プレイヤーに多大な精神的プレッシャーを与える。フィラデルフィア地区大会では、初日に9ラウンドののち32人に絞られ、2日目に追加の5ラウンドが行われて8人に絞られる。それだけでも信じられないラウンド数だ。さらにそれぞれのラウンドが最大で3ゲームずつ行われることを考えれば、これは大多数のプレイヤーにとって、これまでで一番たくさんポケカをやった日になるはずだ。そして何よりも、参加者には、50分の時間制限でさらに別のストレスが重なることになる。

 プレイしてみると、この新方式は、巨大な山をロッククライミングするようなものだと思った。お互いのプレイヤーがだいたい同じくらいのペースで山を登っていき、いずれ誰かが転げ落ちる。つまりは後れを取る。これは1ゲーム目を負けることに似ている。時間制限があるからには、先に転げ落ちたプレイヤーは、死に物狂いになってもう一人に追いつかなければいけない。そして山を登っているあいだには(それだけですでにリスキーな行いだが)、足を踏み外したり滑らせたりということもかなりありうる。1ゲーム目に負けたプレイヤーにとっては、2ゲーム目での1個のミスも負けに繋がってしまう。

 この新方式は、以下のような形でプレイヤーに多大なプレッシャーを与える:

・プレイヤーは、対戦中、どういう時間配分でいくかを定期的に考えなければならない。
・ペース配分を一切考えないのならば、そのせいで面倒なことになる。
・あいまいさを残したまま引き分けにするというのは、それによって試合を終えた多くのプレイヤーを途方に暮れさせてしまう。場の状況を見て本当の勝者を決めるべきなのだろうか? それとも、あと1ターンあれば勝者が決まるのに、引き分けを受け入れろというのだろうか?
・なかにはこの新方式をちゃんと理解していないプレイヤーもおり、相手を急かすと不快感を与えることもある。
・時間切れゲームではサイドの数が関係しないため、あと数ターンあれば明らかに勝ちな状況のときなどは、プレイヤーはかなりの不満に直面することになる。その代わりにプレイヤーは負けか引き分けを受け入れざるを得ず、もしペース配分を違ったふうにしていたら結果は変わっていたと思うと心が滅入ってしまう。
・プレイヤーの多くは全体としてこの方式に不慣れなため、ゲーム前(とゲーム中)に方式の説明が必要になる。
・プレイが遅いプレイヤーに対する不安がある。一方で、プレイスピードが普通であっても相手を急かしてしまうときもある。

 こういった状況すべてのせいで、僕はこの新方式が好きになれない。ただ、新しい大会方式が気に入らないとはいえ、3ゲーム制になったのはうれしく思っている。僕の大会成績について言えば、自分の成績を1ゲーム目の結果だけで表せと言われたら、僕の成績は10-4になるはずだ。そう悪くはないけれども、1ゲーム目の負けは大会の最初の方で起こったから、その成績では(以前の大会方式だと)おそらくトップ32には残れなかっただろう〔※訳注:たぶんオポのことを指していると思われます〕。

 結局のところ、この新方式には多少の修正が必要だと思うけれど、1ゲーム目で1キルされたり運が悪かったりしてもまだなんとかなるというのはありがたい。要するにこれは、ただの魅力のない「足を踏み外さずに高速で山登り」的なものに過ぎないのだから。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 以上になります。お読みいただきありがとうございました。
 ふたつの記事では微妙に意見が異なっているとはいえ、どちらもこのルール変更には不満を持っているのがわかります。
 引き分けが増えるという彼らの予想はだいたい当たっていて、各地のレポートを読んでいると、実際に引き分けがかなり増えています。やはり3ゲーム目のサイド数が無関係になるのが大きいようです。
 確かに3ゲーム制そのものはプレイヤーにとってはありがたいのですが……ルールの落としどころを見つけるのは、なかなか難しいものですね。

コメント

トムリン
2013年11月5日19:21

この記事は、トムリンにも興味深い記事でしたので、翻訳に感謝です。
Pooka自身もデッキチョイスに長文を費やしたあたりにルール変更に悩んだ様子が伺えました。
個人的な意見や対策はマダ固まっていないのですが、海外のレシピを読み解くにあたり頭に入れておくべき内容と感じてます。

うきにん
2013年11月5日19:48

>>トムリンさん
これにキャッチャーと先攻ルール変更が加わると、遅めのデッキでもいけるけど時間制限の壁があるという謎ジレンマが発生しますねw
日本の情報は逐一伝わるだろうとはいえ、今後の彼らのデッキ選択に注目したいです。コンボやロック好きな傾向は面白いので消えないでほしいと思うのですが。

みれ
2013年11月5日23:34

逆の考えで、超低速デッキはサイド差を考えず2ゲーム目の途中でマッチを終えていいわけですね。
遅延したしないで揉めそうですが、そういう選択もありなのかなー、と。

うきにん
2013年11月6日0:05

>>みれさん
言われてみればなるほどです。1-0戦略はかなり有効ですね。
遅延については、このルールだとデッキの速さにかかわらず遅延プレイが効果的な場面が多々ありそうなので、ペナルティ出すジャッジの側も苦心しそうですね。
WCSの決勝トーナメントだとよくジャッジが急かしてますが、競技者が多い場ではそうはいかないでしょうし。

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

最新のコメント

この日記について

日記内を検索