【翻訳】バトルに備えよ――習慣と準備
2013年10月6日コメント (10)
今回も60cards.netから。とはいえ、今回は戦略系ではありません。WCSマスター3位のカメケル使い、James Goodによる、大会前の準備と心構えについての記事です。
読んでみると、意外とありそうでなかったタイプの記事になっています。心構えなんて大丈夫と言わずに、読めば思わぬ発見があるかもしれません。アメリカ選手権や世界大会の話もあって、カードの面でもけっこう面白い内容です。
ちなみにこの著者、写真等を見る限りどう見ても俺様系のキャラなのですが、印象に反して(失礼)、非常にしっかりとした文章を書きます。そのあたりのギャップも楽しんでいただければ。
いつもどおり、訳語の至らなさや誤訳の責任は、すべて僕うきにんに属します。
読みやすさを考慮して、改行を追加した部分があります。
(今回も例によって無許可翻訳なので、何かあればすぐに削除します)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
Get Ready for Battle -- Routines & Preparation
by James Good
Monday, September 30, 2013
ttp://60cards.net/blog/posts/detail/32
■はじめに
やあ、60cardsの読者のみんな。オレはJames Good。ワシントン州シアトルに住んでる、カード始めて2年目のマスタープレイヤーだ。先月ここに投稿したオレのレポートを読んでくれた人もいるかもしれないが、読んでなければここ〔※訳注:ttp://60cards.net/blog/posts/detail/6〕で見てほしい。今日は、いつもとちょっと違ったことを話そうと思う。特定のデッキやメタやらを考察する代わりに、大会に備えて何をしているか、なぜ自分の成功は自分の習慣のおかげなのか、それについて考えてみたいと思う。
事前の準備と習慣は、オレにとっては、プレイテストや、メタデッキを覚えて理解するのと同じくらい大事なことだ。睡眠不足や、空腹や、デッキに不満がある状態で大会に行くのなら、どれだけプレイテストしたって意味がない。そういったことは全部、遅かれ早かれ、判断能力に悪く影響してくる。対戦中のプレイミスが負けに繋がるのは誰でも知ってる。だがデッキリストの記入ミスや、プレイ中の勘違い、そして疲れなど、ほとんどの人が気に留めないようなものならどうだろうか? だいたいの場合そういったものは見過ごされがちだが、ここではそれを避ける手助けをしよう。
■大会前の一週間
プレイテストのやり方をうんぬんするのはやめておこうと思う。というのも、オレらはみんな違った方法を取るし、メタゲームを覚える上でどれが絶対にベストな方法なのかはオレもわからないからだ。オレに言えるのは、習うより慣れろという言葉もあるし、繰り返しは情報を整理して覚えるには良い方法だ、ということぐらいだ。
オレが準備を始めるのは、大きな大会ならその前の週末、小さな大会なら3、4日前だ。この期間中に最初にやることは、どのデッキを使うかを決め、デッキリストを最終版にしてしまうことだ。大会までの残りの期間はそのデッキだけをプレイテストで使って、デッキから何を抜いて何を入れたのかを完全に覚えるようにする。
つまり自分のリストを丸暗記するということだが、これはどれだけ強調しても足りない。デッキリストをいじりすぎて、エネや4枚目のキャッチャーを削ったのを忘れ、ゲーム終盤でそれを探しにいったりしたらちょっとお粗末だ。相手の完全なデッキリストはわからないかもしれないが、少なくとも自分のデッキリストは、1枚1枚覚えることができる。
オレはこういう自論を持っている。「環境最強」と言われているデッキを使っても、勝つ可能性が一番高くなるわけではない。だが使い慣れているデッキを選べば一番高くなる。だからといってホエルオー単みたいなのを大会に持ち込めとは言わないが、使い慣れないし練習も足りないようなトップメタデッキは、選ぶべきではない。
例えば、WCS2013に先立って、オレらは前日のLCQをダークダストが席巻しているのを目の当たりにした。だが、たとえ自分の使おうとしているデッキよりダークダストの方が強いと感じたとしても、ダークダストに不慣れな以上は、デッキを切り替えるのは間違いだとオレは強く思う。デッキが強いのは本人の技術が強いときだけだ。言い換えれば、もし何らかのデッキが物凄く強いように見えたとしたら、それは細かい部分が強いからだ! たった1枚のキーカードでも大きな違いを生むのだから。
■大会前夜
見ていて一番腹が立つ連中は、大会の受付締め切り15分前にやって来て、しかもデッキリストをまだ記入していない奴らだ。これは明らかな準備不足のしるしで、だからオレは、早くこいつと当たらないかなと願うというわけだ。受付を円滑に済ませるためにも、前の日の夜には15分かけて、デッキリストを書くか印刷しておこう。それができたら、間違いがないかデッキリストを見直しする。デッキリストを完全に覚える最後にして最高のチャンスだ。
他の人はともかく、オレは全く朝型人間ではない。朝起きたらすぐ出られる状態でいたい。寝ぼけたままプレイマットや予備のスリーブやダイスを引っ張り出すなんて、一番やりたくないね。だから前日の夜は、そういうものを揃えておいて、すぐ出られるようにしておく。
最後に、しっかり眠ることだ。特に大会が夜まで続きそうなときには。どう見ても徹夜してましたって感じでイベントに来るプレイヤーたちのことは(TCGでも、オレがやる気出してた頃のポーカーでも)全く理解できなかった。心身ともに疲れていると、判断能力はひどくなりがちだ。別に12時間寝ろとか、8時間は寝なきゃ駄目だとか言いたいわけじゃない。自分の体のことは自分が一番知ってるんだから、心と体をきちんと働かせるのに一番いい睡眠時間にすればいい。レブロン・ジェームズが3時間しか寝なかったから最後のシュートを外しただなんて言い訳するのは聞いたことがないからな〔※訳注:レブロン・ジェームズはNBAのスター選手〕。
■大会当日
朝メシを食え!:オレみたいな大きいお兄ちゃんがこんなことを言うのはちょっと可笑しいかもしれないが、本当に朝メシは一日の食事の中で一番大切だ。栄養のあるメシを食え。アルセウスの神に誓って、頼むからファーストフードは食うな。たんぱく質と果物が、忙しい一日には一番エネルギーをくれる。
早めに着いておけ!:時間ぎりぎりまで寝ていて不測の事態のときに時間がなくなったりなんて、オレは絶対したくない。早めに着けば、友達に早く会えるだけじゃなく、朝っぱらから駆け回って余計なストレスを感じずに済む。この時間は、他のプレイヤーが何を使って何を使ってないのかを偵察するのにもかなりいい。
準備は万端にしろ!:だいたいのプレイヤーはよくできてる。だが言っておくが、予備のスリーブは忘れるな! 大会中にスリーブを替える羽目になったら大会どころじゃなくなってしまう。
しっかりシャッフルしろ!:オレはちょっとやり過ぎかもしれないんだが、オレが大会前とラウンド間にするシャッフルの量は笑えないレベルだ。持ってきたデッキの中身がリスト順に並んでいたりすると、1回戦の前に最低でも5回はパイルシャッフルとリフルシャッフルを繰り返す〔※訳注:パイルシャッフルはいわゆるN枚切り。リフルシャッフルは外人がよくやるような、カードの両端を指で弾いて勢いよく重ねるアレ〕。試合が終わると、もちろん時間があればの話だが、デッキをしまう前にパイルシャッフルとリフルシャッフルを最低2回やり、次のラウンドの開始時にもまったく同じ要領でやる。対戦相手には早くしてくれと言わせちゃいけない。たとえ2本先取のマッチのあいだであってもな!
敵とそのデッキを知れ!:もし小さな大会に出るのなら、その前の週とかに相手が何のデッキを使っていたのか覚えるようにしろ。相手がどうプレイしていたのかを掴んでおき、もし相手が面白いカードを使っていたら絶対覚えておくんだ。
相手のガードを解くことができたら、それこそが最大のアドバンテージになる。2013年のU.S.Nationalsでいのちのしずくがあんなにも強かった理由がこれだ。しずくは特定のプレイヤー集団に強いと認知されていただけだったから、初めて遭遇したとき、どう対処していいか誰も知らなかった。みんなが理解していくにつれ、しずくはそこまで強力じゃなくなっていった。
オレが最初にしずくと遭遇したのはU.S.Nationalsの4回戦目で、相手はCurran Hillだった。相手がキュレムにしずくを貼ったとき、オレは他のポケモンをキャッチャーして、そのキュレムを避けて戦おうとした。それが最初のミスだった。ふたつめのミスは相手のトラッシュにプリズムエネが4枚落ちているのを見て、エネ大量のケルディオEXを作ってもデオキのラセンフォースを警戒する必要はないだろうと思い込んでしまったことだ。オレは完全にガードを解いてしまい、相手は草炎超悪のブレンドエネを貼ってゲームを取った。オレは2ターン目に上々な立ち上がりだったにもかかわらず、Curranは二度もこちらのカードを解いたことで、優位に立ってゲームに勝利した。
自信を持て!:オレに言わせれば、参加するどんな大会でも優勝できると考えるのは、エゴイスティックでも何でもない。自分に自信を持てば、プレイのレベルも高くなる。自分より経験がありそうなプレイヤーに気圧されるな。相手がKyle "Pooka" Sucevichだろうが、大して上手くないとぶっちゃけるお父さんプレイヤーだろうが、そんなのは関係ない〔※訳注:Kyle SucevichはTop Cutの有名ライター〕。どんなマッチでも、オレは自分の方が弱いだなんて思わない。(公式イベントだと、Kyleとオレは戦ったことがないんだった……あいつにアブソルEXをただであげたってのにな! 1戦やりたいもんだぜ、Pooka!)
好調を保て!:大会の一番楽しい面のひとつは、友達と会ったりすることだ。だがときには、とりわけ酷い負けのあとには、もう一度集中しなおす必要がある。少し時間を取って、プレイがマズかったのか、単なる偶然の犠牲になっただけなのかを考えてみることだ(Nで相手の手札を1枚にしたらダブル無色を握られたとかな。ドンマイKenny Wisdom)。
オレが大会中に集中力を高めるやり方は、各ラウンドのあいだに数分間、iPodに入れてるアーティストの曲かアルバムから毎回同じものを聴くことだ。こうすれば、長い大会の最中でも、良い感じでいることができるし、大会に何時間も出続けることになるって事実を忘れられる。
オレはどんな音楽でも好きだし、大会のどんな瞬間にも、それにぴったりの曲やアーティストがあると思っている。自分に合った曲を見つけてくれ。気分がハイになる曲や、集中できる曲や、嬉しいときの曲とか心地良くなる曲とか……つまり何か面倒なことが起こったときのための曲とか。参考までにオレの曲は、
気分がハイになる曲:"This Fire Burns" by Killswitch Engage
集中力を高める曲:"Ten Thousand Hours" by Macklemore & Ryan Lewis
嬉しいときに聴く曲:"New God Flow" by Kanye West
ダメなときに聴く曲:"Dream Away" by Lights & Motion
水と食べ物を取れ!:オレの良き友Jon Bristowが世界大会レポートの中で、きちんと食事を取らなかったことが、あの悲劇的なトップ8の試合に影響したかもしれなかったと書いている〔※訳注:Jon Bristowのレポートはttp://60cards.net/blog/posts/detail/13〕。オレはヤツのことが死ぬほど好きだが、そういうのは防げたんじゃないかと思う。夜遅くであっても上手くプレイしなければならないのは確かに事実だが、1時間の夕食休憩とか大会中の他の休憩時間とかは、フードコートやカフェで食べ物にありつくのにもってこいの時間だ。
オレが言いたいのは、体がちゃんと働くのに必要なものを拒むなということだ。この比喩はさっきも使ったが、ペイトン・マニングやエイドリアン・ピーターソンが、まともな朝メシを食わなかったせいで最後に集中力が切れただなんて言うのを聞いたことがあるか?〔※訳注:どちらもNFLのスター選手〕 そう、オレは何億も稼ぐ超有名なアスリートとポケカのプレイヤーを比べて言ってるんだ!
リラックスして楽しめ!:またもやお話の時間だ! こないだの世界大会の準決勝のときだが、オレの友達のSimon Narodeはありえないほど緊張していて、完全に雰囲気に飲まれていた〔※訳注:Simon Narodeは今年のWCSマスター2位。準決勝でJames Goodと対戦〕。手は少し震えてたし、声にもちょっと緊張が現れてた。短いポケカ歴にあって一番大きな大会に出ているとはいえ、友達ながらこれはマズいなと思った。プレイしながら、気分を和らげようと思い、あいつにこう言った。「緊張するなよ、そんなに緊張してたらプレイをミスるぞ」。Simonの名誉のために言えば、あいつのプレイは素晴らしかったし、試合が進むにつれて緊張は自信に変わっていった。
オレの話の教訓はこうだ。このゲームは競技寄りだが、究極的には小さい子たち向けに作られているというのを忘れてはいけない。自分が戦っている試合をあまりに大それたものと考えてしまうと、ストレスも大きいし、楽しくなくなってしまう。たとえ負けても友達と一緒にいられたという事実を楽しむべきだし、お金と時間を大好きなことに注ぎ込めるというのは特別なことだ。オレはポケカを始めて2年かそこらだが、たとえ引退しても、友達との関係はずっと続くだろうと信じている。もっとも、辞める日のことなんか想像できないけどな。勝つことは楽しいが、思い出の方がずっと大切だ。
■大会後のこと
次の戦いに備えろ!:もしCity Championshipsやleagueの期間の最中なら、自分のデッキのどの部分が気に入っているのか、どの部分が気に入らないのかを見定め、デッキの変更点をテストしたり新しいデッキの用意を始めろ。もしデッキを信頼しているのなら、たかが1度の大会結果が悪かったぐらいで諦めるな。このゲームはいつも結果が全てというわけではないし、当たり運が悪かった日や引きが酷かった日というのは、究極的には自分の力ではどうにもならないからだ。
昔の自分を忘れるな!:それで大会では勝てたか? よくやった。だがその結果にうぬぼれるな。さて、偽善者めと言われる前に、オレの過ちを訂正させてほしい。正直に言えば、オレの今年最大のプレイミスは、自分の成功でうぬぼれて調子に乗っていたことだ。世界大会のあとのオレは狂喜して、自信満々だったし、世界だって取れると思っていた。それでみんなに言いふらした。周りに言いふらして回った。だがそれは、ただ単に自分の成功を自慢して回ってただけだった。事実、世界大会後の数週間、オレはとことん有害な人間だった。そういう過ちは、時間が経たないと消えてはくれない。
かつて、オレらは誰もが初心者だった。オレらは周囲の人から学んできた。それが友達だろうと、チームメイトだろうと、地元のプレイヤーだろうと。ワシントン州でオレが属しているコミュニティのおかげで、オレは大会を通じて上手くなれたし、その一員になることもできた。オレが入っているふたつのチーム、Team Ducklett DynastyとTeam Swaggはオレという人間を作り上げてくれて、対戦中の思考プロセスやデッキのカードチョイスに影響を与えてくれた。これは大切なことだが、勝利のちょっとした細部でさえ、自分を助けてくれる人々のおかげだというのを忘れてはいけない。誰でも最初はひどかったし、ありえないようなプレイミスもした。まあ初心者だからねとみんな思っていたものだ。
■結論
ほぼ間違いなく、オレは何かを書き忘れていて、これが掲載されて何日か経ってから思い出すんだろう。まあ、そうだとしても別に構わない。ここに書いたのはすべて、心をちゃんとした状態にして戦いに臨むために、オレが教えられるコツの数々だ。そして何よりも、前向きな気持ちと成功したいという意欲があれば、必ずや成功への道を歩むことができる。さて次に会う時まで、これからのシーズンの幸運を祈っているぜ!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
以上になります。お読みいただきありがとうございました。
僕個人は大会時でも食事はしっかり食べたい派なので、そのあたりの話はかなり共感できました。たんぱく質(protein)と果物というのがアメリカらしいですが……。
余談ですが、文中に出てくる曲はすべてYouTubeに転がってます。聴いてみると、この著者の好みがよくわかりますw
読んでみると、意外とありそうでなかったタイプの記事になっています。心構えなんて大丈夫と言わずに、読めば思わぬ発見があるかもしれません。アメリカ選手権や世界大会の話もあって、カードの面でもけっこう面白い内容です。
ちなみにこの著者、写真等を見る限りどう見ても俺様系のキャラなのですが、印象に反して(失礼)、非常にしっかりとした文章を書きます。そのあたりのギャップも楽しんでいただければ。
いつもどおり、訳語の至らなさや誤訳の責任は、すべて僕うきにんに属します。
読みやすさを考慮して、改行を追加した部分があります。
(今回も例によって無許可翻訳なので、何かあればすぐに削除します)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
Get Ready for Battle -- Routines & Preparation
by James Good
Monday, September 30, 2013
ttp://60cards.net/blog/posts/detail/32
■はじめに
やあ、60cardsの読者のみんな。オレはJames Good。ワシントン州シアトルに住んでる、カード始めて2年目のマスタープレイヤーだ。先月ここに投稿したオレのレポートを読んでくれた人もいるかもしれないが、読んでなければここ〔※訳注:ttp://60cards.net/blog/posts/detail/6〕で見てほしい。今日は、いつもとちょっと違ったことを話そうと思う。特定のデッキやメタやらを考察する代わりに、大会に備えて何をしているか、なぜ自分の成功は自分の習慣のおかげなのか、それについて考えてみたいと思う。
事前の準備と習慣は、オレにとっては、プレイテストや、メタデッキを覚えて理解するのと同じくらい大事なことだ。睡眠不足や、空腹や、デッキに不満がある状態で大会に行くのなら、どれだけプレイテストしたって意味がない。そういったことは全部、遅かれ早かれ、判断能力に悪く影響してくる。対戦中のプレイミスが負けに繋がるのは誰でも知ってる。だがデッキリストの記入ミスや、プレイ中の勘違い、そして疲れなど、ほとんどの人が気に留めないようなものならどうだろうか? だいたいの場合そういったものは見過ごされがちだが、ここではそれを避ける手助けをしよう。
■大会前の一週間
プレイテストのやり方をうんぬんするのはやめておこうと思う。というのも、オレらはみんな違った方法を取るし、メタゲームを覚える上でどれが絶対にベストな方法なのかはオレもわからないからだ。オレに言えるのは、習うより慣れろという言葉もあるし、繰り返しは情報を整理して覚えるには良い方法だ、ということぐらいだ。
オレが準備を始めるのは、大きな大会ならその前の週末、小さな大会なら3、4日前だ。この期間中に最初にやることは、どのデッキを使うかを決め、デッキリストを最終版にしてしまうことだ。大会までの残りの期間はそのデッキだけをプレイテストで使って、デッキから何を抜いて何を入れたのかを完全に覚えるようにする。
つまり自分のリストを丸暗記するということだが、これはどれだけ強調しても足りない。デッキリストをいじりすぎて、エネや4枚目のキャッチャーを削ったのを忘れ、ゲーム終盤でそれを探しにいったりしたらちょっとお粗末だ。相手の完全なデッキリストはわからないかもしれないが、少なくとも自分のデッキリストは、1枚1枚覚えることができる。
オレはこういう自論を持っている。「環境最強」と言われているデッキを使っても、勝つ可能性が一番高くなるわけではない。だが使い慣れているデッキを選べば一番高くなる。だからといってホエルオー単みたいなのを大会に持ち込めとは言わないが、使い慣れないし練習も足りないようなトップメタデッキは、選ぶべきではない。
例えば、WCS2013に先立って、オレらは前日のLCQをダークダストが席巻しているのを目の当たりにした。だが、たとえ自分の使おうとしているデッキよりダークダストの方が強いと感じたとしても、ダークダストに不慣れな以上は、デッキを切り替えるのは間違いだとオレは強く思う。デッキが強いのは本人の技術が強いときだけだ。言い換えれば、もし何らかのデッキが物凄く強いように見えたとしたら、それは細かい部分が強いからだ! たった1枚のキーカードでも大きな違いを生むのだから。
■大会前夜
見ていて一番腹が立つ連中は、大会の受付締め切り15分前にやって来て、しかもデッキリストをまだ記入していない奴らだ。これは明らかな準備不足のしるしで、だからオレは、早くこいつと当たらないかなと願うというわけだ。受付を円滑に済ませるためにも、前の日の夜には15分かけて、デッキリストを書くか印刷しておこう。それができたら、間違いがないかデッキリストを見直しする。デッキリストを完全に覚える最後にして最高のチャンスだ。
他の人はともかく、オレは全く朝型人間ではない。朝起きたらすぐ出られる状態でいたい。寝ぼけたままプレイマットや予備のスリーブやダイスを引っ張り出すなんて、一番やりたくないね。だから前日の夜は、そういうものを揃えておいて、すぐ出られるようにしておく。
最後に、しっかり眠ることだ。特に大会が夜まで続きそうなときには。どう見ても徹夜してましたって感じでイベントに来るプレイヤーたちのことは(TCGでも、オレがやる気出してた頃のポーカーでも)全く理解できなかった。心身ともに疲れていると、判断能力はひどくなりがちだ。別に12時間寝ろとか、8時間は寝なきゃ駄目だとか言いたいわけじゃない。自分の体のことは自分が一番知ってるんだから、心と体をきちんと働かせるのに一番いい睡眠時間にすればいい。レブロン・ジェームズが3時間しか寝なかったから最後のシュートを外しただなんて言い訳するのは聞いたことがないからな〔※訳注:レブロン・ジェームズはNBAのスター選手〕。
■大会当日
朝メシを食え!:オレみたいな大きいお兄ちゃんがこんなことを言うのはちょっと可笑しいかもしれないが、本当に朝メシは一日の食事の中で一番大切だ。栄養のあるメシを食え。アルセウスの神に誓って、頼むからファーストフードは食うな。たんぱく質と果物が、忙しい一日には一番エネルギーをくれる。
早めに着いておけ!:時間ぎりぎりまで寝ていて不測の事態のときに時間がなくなったりなんて、オレは絶対したくない。早めに着けば、友達に早く会えるだけじゃなく、朝っぱらから駆け回って余計なストレスを感じずに済む。この時間は、他のプレイヤーが何を使って何を使ってないのかを偵察するのにもかなりいい。
準備は万端にしろ!:だいたいのプレイヤーはよくできてる。だが言っておくが、予備のスリーブは忘れるな! 大会中にスリーブを替える羽目になったら大会どころじゃなくなってしまう。
しっかりシャッフルしろ!:オレはちょっとやり過ぎかもしれないんだが、オレが大会前とラウンド間にするシャッフルの量は笑えないレベルだ。持ってきたデッキの中身がリスト順に並んでいたりすると、1回戦の前に最低でも5回はパイルシャッフルとリフルシャッフルを繰り返す〔※訳注:パイルシャッフルはいわゆるN枚切り。リフルシャッフルは外人がよくやるような、カードの両端を指で弾いて勢いよく重ねるアレ〕。試合が終わると、もちろん時間があればの話だが、デッキをしまう前にパイルシャッフルとリフルシャッフルを最低2回やり、次のラウンドの開始時にもまったく同じ要領でやる。対戦相手には早くしてくれと言わせちゃいけない。たとえ2本先取のマッチのあいだであってもな!
敵とそのデッキを知れ!:もし小さな大会に出るのなら、その前の週とかに相手が何のデッキを使っていたのか覚えるようにしろ。相手がどうプレイしていたのかを掴んでおき、もし相手が面白いカードを使っていたら絶対覚えておくんだ。
相手のガードを解くことができたら、それこそが最大のアドバンテージになる。2013年のU.S.Nationalsでいのちのしずくがあんなにも強かった理由がこれだ。しずくは特定のプレイヤー集団に強いと認知されていただけだったから、初めて遭遇したとき、どう対処していいか誰も知らなかった。みんなが理解していくにつれ、しずくはそこまで強力じゃなくなっていった。
オレが最初にしずくと遭遇したのはU.S.Nationalsの4回戦目で、相手はCurran Hillだった。相手がキュレムにしずくを貼ったとき、オレは他のポケモンをキャッチャーして、そのキュレムを避けて戦おうとした。それが最初のミスだった。ふたつめのミスは相手のトラッシュにプリズムエネが4枚落ちているのを見て、エネ大量のケルディオEXを作ってもデオキのラセンフォースを警戒する必要はないだろうと思い込んでしまったことだ。オレは完全にガードを解いてしまい、相手は草炎超悪のブレンドエネを貼ってゲームを取った。オレは2ターン目に上々な立ち上がりだったにもかかわらず、Curranは二度もこちらのカードを解いたことで、優位に立ってゲームに勝利した。
自信を持て!:オレに言わせれば、参加するどんな大会でも優勝できると考えるのは、エゴイスティックでも何でもない。自分に自信を持てば、プレイのレベルも高くなる。自分より経験がありそうなプレイヤーに気圧されるな。相手がKyle "Pooka" Sucevichだろうが、大して上手くないとぶっちゃけるお父さんプレイヤーだろうが、そんなのは関係ない〔※訳注:Kyle SucevichはTop Cutの有名ライター〕。どんなマッチでも、オレは自分の方が弱いだなんて思わない。(公式イベントだと、Kyleとオレは戦ったことがないんだった……あいつにアブソルEXをただであげたってのにな! 1戦やりたいもんだぜ、Pooka!)
好調を保て!:大会の一番楽しい面のひとつは、友達と会ったりすることだ。だがときには、とりわけ酷い負けのあとには、もう一度集中しなおす必要がある。少し時間を取って、プレイがマズかったのか、単なる偶然の犠牲になっただけなのかを考えてみることだ(Nで相手の手札を1枚にしたらダブル無色を握られたとかな。ドンマイKenny Wisdom)。
オレが大会中に集中力を高めるやり方は、各ラウンドのあいだに数分間、iPodに入れてるアーティストの曲かアルバムから毎回同じものを聴くことだ。こうすれば、長い大会の最中でも、良い感じでいることができるし、大会に何時間も出続けることになるって事実を忘れられる。
オレはどんな音楽でも好きだし、大会のどんな瞬間にも、それにぴったりの曲やアーティストがあると思っている。自分に合った曲を見つけてくれ。気分がハイになる曲や、集中できる曲や、嬉しいときの曲とか心地良くなる曲とか……つまり何か面倒なことが起こったときのための曲とか。参考までにオレの曲は、
気分がハイになる曲:"This Fire Burns" by Killswitch Engage
集中力を高める曲:"Ten Thousand Hours" by Macklemore & Ryan Lewis
嬉しいときに聴く曲:"New God Flow" by Kanye West
ダメなときに聴く曲:"Dream Away" by Lights & Motion
水と食べ物を取れ!:オレの良き友Jon Bristowが世界大会レポートの中で、きちんと食事を取らなかったことが、あの悲劇的なトップ8の試合に影響したかもしれなかったと書いている〔※訳注:Jon Bristowのレポートはttp://60cards.net/blog/posts/detail/13〕。オレはヤツのことが死ぬほど好きだが、そういうのは防げたんじゃないかと思う。夜遅くであっても上手くプレイしなければならないのは確かに事実だが、1時間の夕食休憩とか大会中の他の休憩時間とかは、フードコートやカフェで食べ物にありつくのにもってこいの時間だ。
オレが言いたいのは、体がちゃんと働くのに必要なものを拒むなということだ。この比喩はさっきも使ったが、ペイトン・マニングやエイドリアン・ピーターソンが、まともな朝メシを食わなかったせいで最後に集中力が切れただなんて言うのを聞いたことがあるか?〔※訳注:どちらもNFLのスター選手〕 そう、オレは何億も稼ぐ超有名なアスリートとポケカのプレイヤーを比べて言ってるんだ!
リラックスして楽しめ!:またもやお話の時間だ! こないだの世界大会の準決勝のときだが、オレの友達のSimon Narodeはありえないほど緊張していて、完全に雰囲気に飲まれていた〔※訳注:Simon Narodeは今年のWCSマスター2位。準決勝でJames Goodと対戦〕。手は少し震えてたし、声にもちょっと緊張が現れてた。短いポケカ歴にあって一番大きな大会に出ているとはいえ、友達ながらこれはマズいなと思った。プレイしながら、気分を和らげようと思い、あいつにこう言った。「緊張するなよ、そんなに緊張してたらプレイをミスるぞ」。Simonの名誉のために言えば、あいつのプレイは素晴らしかったし、試合が進むにつれて緊張は自信に変わっていった。
オレの話の教訓はこうだ。このゲームは競技寄りだが、究極的には小さい子たち向けに作られているというのを忘れてはいけない。自分が戦っている試合をあまりに大それたものと考えてしまうと、ストレスも大きいし、楽しくなくなってしまう。たとえ負けても友達と一緒にいられたという事実を楽しむべきだし、お金と時間を大好きなことに注ぎ込めるというのは特別なことだ。オレはポケカを始めて2年かそこらだが、たとえ引退しても、友達との関係はずっと続くだろうと信じている。もっとも、辞める日のことなんか想像できないけどな。勝つことは楽しいが、思い出の方がずっと大切だ。
■大会後のこと
次の戦いに備えろ!:もしCity Championshipsやleagueの期間の最中なら、自分のデッキのどの部分が気に入っているのか、どの部分が気に入らないのかを見定め、デッキの変更点をテストしたり新しいデッキの用意を始めろ。もしデッキを信頼しているのなら、たかが1度の大会結果が悪かったぐらいで諦めるな。このゲームはいつも結果が全てというわけではないし、当たり運が悪かった日や引きが酷かった日というのは、究極的には自分の力ではどうにもならないからだ。
昔の自分を忘れるな!:それで大会では勝てたか? よくやった。だがその結果にうぬぼれるな。さて、偽善者めと言われる前に、オレの過ちを訂正させてほしい。正直に言えば、オレの今年最大のプレイミスは、自分の成功でうぬぼれて調子に乗っていたことだ。世界大会のあとのオレは狂喜して、自信満々だったし、世界だって取れると思っていた。それでみんなに言いふらした。周りに言いふらして回った。だがそれは、ただ単に自分の成功を自慢して回ってただけだった。事実、世界大会後の数週間、オレはとことん有害な人間だった。そういう過ちは、時間が経たないと消えてはくれない。
かつて、オレらは誰もが初心者だった。オレらは周囲の人から学んできた。それが友達だろうと、チームメイトだろうと、地元のプレイヤーだろうと。ワシントン州でオレが属しているコミュニティのおかげで、オレは大会を通じて上手くなれたし、その一員になることもできた。オレが入っているふたつのチーム、Team Ducklett DynastyとTeam Swaggはオレという人間を作り上げてくれて、対戦中の思考プロセスやデッキのカードチョイスに影響を与えてくれた。これは大切なことだが、勝利のちょっとした細部でさえ、自分を助けてくれる人々のおかげだというのを忘れてはいけない。誰でも最初はひどかったし、ありえないようなプレイミスもした。まあ初心者だからねとみんな思っていたものだ。
■結論
ほぼ間違いなく、オレは何かを書き忘れていて、これが掲載されて何日か経ってから思い出すんだろう。まあ、そうだとしても別に構わない。ここに書いたのはすべて、心をちゃんとした状態にして戦いに臨むために、オレが教えられるコツの数々だ。そして何よりも、前向きな気持ちと成功したいという意欲があれば、必ずや成功への道を歩むことができる。さて次に会う時まで、これからのシーズンの幸運を祈っているぜ!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
以上になります。お読みいただきありがとうございました。
僕個人は大会時でも食事はしっかり食べたい派なので、そのあたりの話はかなり共感できました。たんぱく質(protein)と果物というのがアメリカらしいですが……。
余談ですが、文中に出てくる曲はすべてYouTubeに転がってます。聴いてみると、この著者の好みがよくわかりますw
コメント
写真見た後で文章読むとニヤニヤしてしまいますw
朝ごはん食べろ!早めに行動しろ!とかポケカBlogにあっても全然いけそうな健全さがいいですね。
現地での所作を見てもユニークな感じの人でしたが、翻訳文でも人柄が出ていますね。
内容は、トムリンも同意見。奇しくも、WCSレポで「ポケカは知的スポーツなのでアスリートと同じ取組みが必要」と書いたことに重なってしまいます。
ちなみに、太った人ほど繊細なものですよw
更新を見逃さないようリンクさせて頂きます。
お読みいただきありがとうございます。僕も読みながら好感度が上昇していましたw
この語り口で大真面目な内容を語るこの絶妙な感じがツボです。
>>トムリンさん
お読みいただきありがとうございます。嘘かホントか、当人のプロフィールにはジャーナリズムの素養ありと書いてあるので、きちんとした文章も納得なのですが、それでも抑えきれないこのキャラが良い感じですw
僕もポケカは知的スポーツだと思っているので、取り組む姿勢は参考になりますね。
>>はるくんの父さん
お読みいただきありがとうございます。更新頻度は全然多くないのですが、今後もなるべくは中身のある内容を心がけたいと思っています。
リンクお返しいたしました。
今後のことを考えると、これらの記事は大変重要になってくるのでしょうね。
お読みいただきありがとうございます。
12月の大会に備えて色々と考えておきたいですね。ただ食事とかは、普段のうきにん杯でもけっこう気になってしまいますw
不都合がございましたら削除いたしますので、お知らせください。
お読みいただきありがとうございます。
デッキ選びに関する部分は説得力がありましたね。
訳文はどうぞご自由にお使いください。そもそも原文を無断で翻訳している僕が言えたことではないのですが……w
何度もみさせていただいたのですが、自信を持て!の項の最後から2行目アブソルEXですが、Psアブソルだと思うんで、訂正お願いします。
次回の翻訳も楽しみにしています。
読んでくれてどうもありがとう。
原文がAbsol exで、なおかつアブソルexは実在するカードなので、これがアブソルPsだとすぐに断定するのはちょっと難しい。もちろん時代を考えれば後者である可能性は高いけれど、基本的に翻訳は原文に則るのがルールなので。
なおかつ、万が一Absol exが何らかの元ネタ(や身内ネタ)に基づいていた場合、訂正してしまうと元も子もないので、今回は訂正なしということで。("that Absol ex"と言っているので本人たちの間ではわかっているのでしょう)。プラズマの方かもしれないと訳注つけても良いけどそこまで重要な箇所でもないしね。てか原文読んだ?